「愛してた。」～最終章・続～ (ページ13)

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　ｉｎエストラーネオ旧本拠地

　嵐山ｓｉｄｅ

　Aが眠ってから今日で丸一週間が過ぎようとしていた

　俺は、迅を探して彼女の部屋の扉を開けた

迅「あ・・・黎・・・」

嵐「また、ここに来てたのか」

迅「・・・うん」

　あの日から、迅は毎日この部屋へ行くようになった。

　最初のうちは片時も彼女のそばを離れようとせず、彼女のベッドに突っ伏してただひたすらに謝

　り続けていた

　『ごめん、ごめんな・・・。俺が必ず、お前のことを救ってみせるから・・・だから・・・』

　廊下で迅がそう呟いているのを聞いたときは、どうしようもない悲しみや怒りなどの感情がご

　ちゃ混ぜになった、なんとも形容しがたい気持ちになったのをよく覚えている。

　それを過ぎると、これでよかったのかと、これしか手はなかったのかという疑問が絶えず頭の中

　に浮かぶようになった。

　迅もそれは同じだったようで、度々尋ねてくるようになった。

　俺は、その質問に答えることはできなかった。

　『一度してしまったことは取り返しがつかないのだ』と彼に言い、そして、自分に言い聞かせる

　しか・・・

迅「なぁ、黎さん」

嵐「ん？」

迅「俺、ずっと考えてたんだ。」

　俺は無言で先を促した

迅「俺は、『闇社会』から守るためにこの子をここへ連れてきた。いろんなひどいこともした。そ

　のせいで、Aはもう外へ出ることはできないし、抑制薬の『鍵』となる言葉を彼女の名

　前にしたから、一生名を呼ばれることもない」

嵐「・・・そうだな」

迅「そこまでしたからには俺はこの子を幸せにしてあげなきゃいけない。だから俺、この子が目を

　覚ましたら『彼氏役』を演じることに決めたよ。」

嵐「それは・・・」

　それは、迅にとっては最もつらい選択といえるのではないだろうか。

　己が愛したものと全く同じ声、容姿をした別人と自分を偽って一生連れ添って生きていかなけれ

　ばならない。自分を殺して、偽りの名とともに・・・お互いに偽りの名を呼びあって

嵐「・・・その選択を、わざわざ自分で選んでしまうあたり、お前らしいな」

　こいつは馬鹿で、根っからのお人好しだ

　特にAに対しては、自分のすべてを捨ててまで尽くそうとする。能力の件がいい例だろう

　・・・そんなお前を見ていると、危なっかしくて見ていられないんだよ

嵐「・・・なら、俺はAの兄をかってでようかな」