＊156＊ 昔々�� ページ2
―――戦場に悲鳴がこだます。
そのほとんどが自分の家族で、友人で、仲間のもので。
枢「・・・どうして、こうなった・・・？」
俺はただ、守りたかっただけなのに。
己の仲間を庇えないのなら、せめて同じファミリー内の者だけでも守ろうと。
それだけ、だったのに。
枢「利用、されたのか。」
その心を。覚悟を。
・・・俺は、なんて愚かなんだろう。
？「ボーっとしてんじゃねぇ！バカ！！」
枢「っ！」
すぐ間近で金属がぶつかる音と、場違いなほどに高く、美しい声が聞こえた。
枢「彩(さや)！」
彩「ここは戦場で、アンタは当主だ！つまり私の旦那だ！そんな奴が、なにを呆けて突っ立って
る？！」
愛する者の鋭い声に、目が覚める。
そうだ、俺は、呆けている暇なんてない。
目を開けろ。頭を動かせ。一人でも多く救うために。
枢「全員聞け！！撤退だ！逃げろ！逃げて、一人でも多く生き延びろ！！！」
.
.
貴「・・・まぁ、なんというか・・・ずいぶん男気のある奥さんだったんだね。」
ツヴァイ「えぇ、それはもう。女々しい枢にはぴったりの、素晴らしい奥方様でした。」
少し楽しそうに目を細めたツヴァイ。
あぁ、やっぱり、ツヴァイは枢さんを知っているのか。
貴「・・・すこし、羨ましいな。」
ツヴァイ「え？」
あ、いけない。
思ったことがそのまま出てしまった。
ツヴァイ「・・・羨ましがることはありませんよ。私の中には、彼らの楽しかった記憶なんてほ
とんど残っていないのですから。」
貴「どうして？」
ツヴァイ「単純ですよ。彼らが、若くして死んだから。」
・・・予想は、していた。
きっと、いま語られた戦いでみんな亡くなるんだろう。
単純に数の差が圧倒的すぎるから。
いくら撤退だって言ったって、自分たちの何倍もある軍勢を相手にそう簡単に逃げられるはず
がないから。
・・・それでも助かってほしいと願ってしまうけれど。
貴「続きを聞かせて」
ツヴァイ「・・・」
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