三間半之槍【刀剣乱舞】 (ページ9)

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第１叩 - 08 ページ9

｢信じらんない。そんなぞんざいに、ぞんざいにぃい！｣

｢に、兄さん落ち着いて｣
｢あーあー、折角隠れてみてたんだけどな｣

｢いつからそちらに……？、どうなさいました？」

可憐なかんばせを歪ませ、不動に真剣必殺の勢いで詰め寄る乱藤四郎にも、その後ろに控えた五虎退、鯰尾藤四郎にも、薬研は頭を抱えた。

｢不動、先に謝っとく。俺っちの兄弟がすまねぇ｣

猫の目のような人の入れ替わり。
たじろぐ暇も、薬研の耳打ちに真意を問う隙間も与えられないで、不動はまくしたてられた。

｢あのね！三間半さんは、ずーっとずーっとあなたのこと待ってたの！

いつもわがままいわないし、誰かさんみたいに他の刀剣と諍いも起こさなくて、誉10回とったらあるじさんにできるおねだりもしなくて！
全然悪い子じゃない三間半さんが！！

あなたにどうしてもきてほしいっていうから、竹藪では自分が邪魔になるから、みんなにお願いして。
だから、みんなして探して、探してさぁ！

それで、やっと…！って。思ったのに。

あなたにもいろいろあったのかもしれないけどさ、
そんなの、そんな風にするのって、僕、信じらんない。

三間半さんに優しくしてよね！｣

自ずと足が下がっていった。

｢乱、だから俺は前々から、｣
｢兄さん、は、離れましょう……｣

即座に4人がかりで乱を宥め始めたが、耳をふさぎたくなる勢いに半歩、半歩と後ずさった。
ついに不動は、後ろの何かに、とす、と頭をぶつけた。もう下がれないのか。

目の前の怒涛に、ぐしゃぐしゃと詰まって思考がふさがった。

なんでこんな言われなくちゃいけないんだ。
薬研も兄弟ならもっと早く止めてくれりゃあいいのに。

半開きの口から息が漏れた。
悲観しつつ、ここまでいわれてさすがに一言も浴びせ返さないわけにはいかなかった。

単なる貶め言ならば、のらりくらり、甘酒でかわすこともできた。だが乱は図星のど真ん中を突いていて、不動だって本当の本当は得心していたから。

かっとなった。

ぐしゃつく思考を無理矢理こじ開けて、口を開いた。

それが、たとえ、本心じゃなかったとしても。

｢……ひっく、ダメ刀探してくれなんて、頼んでねぇだろぉ…！｣

不動の後頭部に当たっていた“何か”が仄かに動揺して、はっと冷たくなった頭が後ろに何がいるか思い出させた。

｢さんけんは、｣
｢不動行光！ぜぇったい許さない！！！｣

そこからはもう、殴り合いだった。