三間半之槍【刀剣乱舞】 (ページ38)

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第６叩 - 02 ページ38

｢おいおい非道い言い様だな、光坊。俺も歴とした用事さ。
さて、……いたいた！蜻蛉切もいるのか｣

光忠の横で片手をかざして畑を眺めた鶴丸は、人影を２つ捉えた。

｢蜻蛉切くん、この前主に二人で当番組む約束を取り付けてたからね。……くっ、僕が誉を取っていればっ！｣

｢男の嫉妬は見苦しいというが、最低限トマトは潰してくれるなよ？｣

｢勿論、格好悪いことはしないさ。……あぁ、髪が地面に擦ってるじゃないか。結んであげたい…｣

｢……邪魔しに行く気満々じゃないか｣

では早速とばかりに近づこうとした瞬間、駆け込んできた新たな人影に２人は思わず物陰に隠れ直した。

｢あれは一期か…？｣

どうしたことか。一期一振は畑を見回し始めた。
肩で息をしながらも、すっと伸びた背筋は一期が｢ロイヤル｣と呼称される所以である。

鶴丸も光忠も、誰にも行き先を告げてこなかったから、探し人は自分たちではなかろう。

(…それはさておき、おかしいぞ。)

鶴丸国永は首を傾げた。
数日前から一期一振は主に頼みこんで出陣し続けていたはずで、今日も例外なく部隊長で指揮を取っていたはずだ。鶴丸だけでなく、仲間の全員が知っている。

｢戦装束のままだね。｣
｢ああ、帰還した其の足で来たのか｣

目配せした２人は、様子を見守ることにした。

・

｢三間半っ、ここにいるか！
ご返答をっお願い申し上げるっ！三間半っ！｣

｢はい、ここに！……一期さま！？、お怪我なさったのですか？｣

｢戦ではなかったのか？…尋常ではない汗だな。三間半、一期に水を｣

声を張り上げた一期一振に、作物の支柱の陰から立ち上がって顔を出した二槍は、鶴丸同様に目を丸くした。
大慌てで飲み水を差し出した三間半に、何を血迷ったのか一期は柄杓ではなく細腕を握った。

その勢いに、柄杓から水が零れ落ち、徒に土を潤す。

――――いよいよ何事か。

その場の全員が汗だくの彼の様子をうかがう中。
一期一振は三間半の目の前で、徐に片膝をついて金春色の髪を揺らした。

春風が吹いたのかと見紛う仕草に、彼女が息をつく間はなかった。

｢……私と、夫婦になってくだされ！｣

めおと。

めおと、とは。

畑のその一角だけ時が止まったように降りた静寂を、何かが潰れた音が破った。

｢……こッれは、驚きだぜ！｣

光忠がその片手で粉砕したトマトで赤く染まりながら、鶴丸は大波乱を予見した。