第6叩 - 太刀の兄と人妻の槍 ページ37
「満を持して登場だ!」
「鶴さん、誰とお話ししてるの?」
母屋から離れた物陰で、燭台切光忠は真っ白な背中に呆れた顔をした。
その男、鶴丸国永。
儚く美しいその姿に騙されるなかれ。
彼の身は「驚き」に捧げられている。
彼の仕掛けや悪戯の毒牙にかからない者は審神者含め誰一人としていない。
無論、時に度が過ぎれば仲間も復讐や叱責を返している。
過去には驚かし甲斐がある「お気に入り」に、興に乗って…というか羽目を外しに外して外し続けた結果、仕返しとして、頭部以外全てを中庭のど真ん中に一晩中埋められたことさえある。
ちなみに、この仕置きは彼を喜ばせる失敗策だった。
この本丸では中庭を全刀剣の私室が囲んでいて、起床した皆を大層驚かせてしまったのである。……戸を開けたら寝ぼけ眼に土から生えた仲間の生首が飛び込んできたのだから、無理もない。
さらに余談だが、この本丸において「中庭」と「鶴丸さん」という言葉は、「なまはげ」と同列になっている。
曰く、悪いことをすると諫められるぞ、と。
とにかく。
誰に何をされようと。
誰に何を言われようと。
懲りずに、今日も驚きに勤しむ男である。
「そういえば光坊。不動行光がいやに冷たい目で俺を見るんだが、何か知ってるか?」
「どうせ悪戯したんでしょ?」
「いやいや、初日に予想外が起きてまだ一度もしてないんだがな…」
「不動くんにじゃなくても、三間半ちゃんにだよ…」
もう、と凜々しい眉を曇らせながら、光忠は鶴丸の「お気に入り」を思い浮かべた。
織田家ゆかりの刀剣達の庇護下にある、あの槍のことだ。
端からはわかりにくい庇護だが、彼女が受けた悪戯共の仕返しに結託してわざわざ鶴丸の背丈に合わせた深さの穴を中庭に掘ったのはあの3人なのだ。その庇護者は不動行光も例外ではないはずだ。
「ひどい悪戯しないでよ、鶴さん。何故か僕まで宗三くんに色々言われるんだから…」
「ははは!三間半は最高だ!なにせ織田のあいつらまで反応するオマケ付きだからな」
「…僕も怒るからね?」
「…はは、身をもって知ってるさ。ところで光坊はこんなところでどうしたんだ?」
「僕“は”ちゃんと用があって来たんだよ」
これが足りなくてね、と手の中のトマトを見せた光忠は内心彼女に会いに行く口実ができたことに喜色満面だ。ついでに、鶴丸の魔の手が彼女にかかる前に助けることができそうだし、という安堵は噯にも出さない伊達男であった。
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そらちゃんです!!(プロフ) - うわああああああすききききききききいいいいいいいいいいいいい (2020年8月21日 13時) (レス) id: 5d277503a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カルティ | 作成日時:2017年12月20日 23時