第5叩 - 03 ページ34
三間半が顔面から髪まですっかり舐められた薬研を井戸に連れていってしまい、厩舎には二人が残された。
「んじゃ、俺たちで仕事進めますかっと。不動、お仕事交換しよう」
「…なんで」
「だって、不動舐められないじゃん。
俺だって近くで世話したいけど、救出してくれる人がいないときはやらない」
「また三間半に助けてもらえばいいだろぉ」
「だーかーら、その三間半がいないんじゃん」
「お前が叫べば、すぐ飛んでくるんじゃねぇのかぁ?」
「来ないよ。」
む、と頬を膨らませた蛍丸は、語気を強めた。
「来るわけないじゃん。薬研に付き添ってるのに」
蛍丸は言い捨てて、手助けが望めないと悟って厩舎の隅でしゃがんで休み始めた。
不動は不動で、蛍丸の怒りの鯉口に手をかけたことを察して黙りながら、頭を疑問符が占めた。
(…今、なんで三間半がこの大太刀を大事にしてると思ったんだ?)
厩舎に、馬の蹄と藁の擦れる音だけが響く。
不動の中で、何かが、じくじくとしみつくように思考を侵食していた。
「はー、さっぱりしたぜ…って何さぼってんだ?」
「さぼってませーん」
・
薬研達が戻ってきて、蛍丸と不動が仕事を交代すると、三間半は不動につきっきりになった。
だというのに、やっぱり三間半が蛍丸を優先している気がしてならない。
「よそ見しとらっせると危にゃぁですよ」
「…わかってる」
三間半が不動のために馬当番につきあっていることも、殆ど全行程手伝ってくれてたのも知っているのに、なぜこんなことを考えているのか、彼は理由がみつからない。
(…それに、俺よりあの大太刀を大事にしたって別に文句はないのに)
仕事を終えた蛍丸が薬研としゃべっているのすら、不動は無性に気になった。
――――実はこの時、不動自身意識すらしていなかった「羨望」に蛍丸だけが気づいて薬研に耳打ちしていたのだが、不動が知るはずもなく、
脇見して馬に背を向けたのが悪かったんだろう。
べしゃ。
不動は、粘着質な水音が骨伝導で聞こえた。
後頭部を触って確かめると、やはり、舐められていた。
「うわ、不動」
「お、ついにやったな…!」
「嬉しそうにするんじゃねぇ、薬研…」
うえ、とべたべたになった手を見下ろしていたら、その汚れた手を一回り大きな手が掴んだ。
「不動さま、ちゃっと洗ってきましょう!」
(……俺一人にこんなに焦ってくれるのに、何でこんなにじくじくするんだ?)
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そらちゃんです!!(プロフ) - うわああああああすききききききききいいいいいいいいいいいいい (2020年8月21日 13時) (レス) id: 5d277503a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カルティ | 作成日時:2017年12月20日 23時