三間半之槍【刀剣乱舞】 (ページ25)

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第３叩 - 完ページ25

一方、こちらでは。

｢引き摺らんけりゃ、そんでいいのに…｣

捕らえられた三間半は、口以外は逆らわずに両膝を抱えて大人しくしていた。

｢何言ってんの、雑な結び方しちゃって。
セットし甲斐ある髪してんだから綺麗にすればいいのに｣

束ねるのさえ重労働な長髪をひとつひとつ編みながら、ポケットから予備の髪紐を取り出して止めていく。

この槍は、綺麗にするのは面倒の一点張りで、最低限の身嗜みは敬愛する刀の体裁のため。
信じられない、と格好を重んじる刀剣は、時折髪を整えてやるのだが、彼女は丁寧に触られるのはむず痒いらしい。

バサバサの薄墨色の毛先を梳く加州の心中を知らぬ彼女は、唇を尖らせていた。

｢別に、見目で可愛がられてゃあと思ってません｣
｢わかってるって。俺のことは気にしなくていいから、じっとしてて｣

ぺし、と後頭部を緩く叩いて、また編み込み始める。

確かに世辞にも、彼女の容姿は加州より可愛いと言えない。
高身長で膂力もある身体、凜々しい眉とは反対に垂れた眦は花のかんばせとはほど遠い。

だが、愛嬌は一級品だ。

｢審神者さまも、加州さまの一番良いところは、仲間をよく見てて頼りになるところって、言っとりましたのにー…｣

｢“も”って、…他に誰が…って、えっ!?主が？いつ!?それ本当ッ!?｣

｢此度の編成のお話ししとった折にございます。私も頼りになる加州さま、好きですもん｣

｢すッ……！

…オラァ！できた！！こーやって可愛くしてたほうが、宗三とかには喜ばれると思うな！！
おーい、不動！どう、三間半可愛いでしょ！｣

他意はないに決まってる！！

熱い顔を知らんぷりして、極力陽気な大声を挙げた加州だった。
頼られるのは、悪くないけど。

・

さて、遠征の帰り道。

｢はは、まっさかー…？｣

最後尾を歩く加州は乾いた笑いを浮かべた。

｢三間半ぐらい、でっかくなりてえなー｣
｢……背丈はどうでもいいだろぉ｣
｢案外男らしいな不動…、でもそれとこれは別なんだって！な、後藤！｣
｢わかる、わかるぜ獅子王さん！とりあえず、不動抜かす！｣
｢ひっく、勝手にしろぉ｣

｢～～それで、兼さんが～…～！｣
｢先日～宗三さまが、～！ほんで、長谷部さまは、～｣
｢兼さんだったら、～｣

(主、俺を犠牲に編成してないよね……？)

聞いてる側がくたくたになる話題で騒ぐ隊員を眺めている加州の顔は、疲弊しながらも綻んでいた。

帰ったら主に聞かなきゃ、色々と。