三間半之槍【刀剣乱舞】 (ページ3)

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第１叩 - 02 ページ3

お察しの通り、この不動行光はほんの数刻前、竹林の奥にいたのを当本丸の部隊に拾われた。入手した物はすべてお土産、という方針に則り連れて帰られた次第である。

審神者について知る由もないが、今後不動行光を捨てるにせよ、折るにせよ、飾るにせよ、使うにせよ、返答があってしかるべきだ。
そして今しがた部屋から飛び出て行ったあれの正体を教えてもらわなければ気がすまない。

不動行光は、ぱっと審神者を振り向いた。

｢お待ちしていました、不動行光。
刀剣たちもあなたが来る日を楽しみにしてきましたから｣

温和に和室に響く声。それにぴたりと沿う言葉遣い。
不動行光が自分を顕現したのがこの人の子だとわかってしまったのは、神の一端として当然だった。

だがそれは欲した答えではない。

｢こんなダメ刀を待ってただってぇ？
ひっく、そりゃあ大層物好きなこった。俺が来たところで何にも変わりやしないだろぉ｣

｢それでも待っていたんです。首を長くして｣

胡乱な目つきと雑な声色に、人の子はわずかに声を漏らして笑った。

直感的に、これは俺への笑い声ではない他の誰かに向けたものだと気づいた。
……例えば、先ほどの薄墨色の長髪をそなえた女に。

あの女が俺を待っていたとでも？だが、あんな奴覚えがない。
ぐっと曇らせた不動行光の眉に、ぱっと光が差し込んだ。障子が開いたのだ。

｢よお大将、ついに来たって？……不動！こりゃ久方ぶりだな｣

｢お、お前……薬研かぁ？｣

桟に手を掛け入ってきたのは旧知の刀であった。こうして人の形でまみえることこそ初めてであれど、同じ主の元にいた刀同士、すぐに互いが何であるか理解した。

薬研籐四郎はにぃっと大きく笑って審神者をかえりみた。

｢もうあいつには会ったんだろう？｣

｢もちろん｣

｢で、今は？｣

｢貴方方を呼びに行ったとみえたのですが」

｢せっかちな奴め｣

入れ違ったとわかり、くつくつ笑う薬研に不動は少々腹が立った。こちらは何もかも置いてきぼりだ。

｢おい薬研、何がおもしれぇんだ｣

｢悪い。大急ぎにもほどがあると思ってな。あれだけ不動さま、不動行光さまってこぼしてたくせになぁ、……ん？｣

｢主の耳を煩わせるほどに、な｣

薬研の後ろから、また一人現れた。
彼は、審神者にすれ違って部屋に入ってきた。

｢……へし切長谷部か｣

｢不動行光だな｣

部屋から姿を消した審神者とうってかわって、険しい目つきの男が見下ろしていた。