三間半之槍【刀剣乱舞】 (ページ18)

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第弐降 - 粟田口兄弟と長身の槍ページ18

量産品は代えがきく。
誰人が言った。故に大事にされるわけがない、丁寧に扱われなくて然るべきだ。
誰人が言った。故に、量産品は殊更欲しがられないのだ、要らないのだ。

そんな愚作は、捨て置け、と。

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｢だ、だめ……！と、虎くん早く離れて…！｣

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障子の隙間から射した朝日に、僕の虎くんが３匹も出て行ってしまったことに気がついて飛び起きた。

１匹は、目覚めがあんまり良くない薬研兄さんを起こしてしまって、残りの虎くん達まで誰かにこんなことをしていたらどうしよう、と浮かんでくる涙を袖で拭う。

欠伸しながらついてきてくれた兄さんに励まされ、兄弟の大部屋を飛び出し、漂う朝食の香りに見当をつけて食事の広間に急ぎ向った。

道中、今剣さんが１匹抱いてくれていて、最後の１匹は…

｢三間半のかみのけでじゃれるとらくん、たのしそうです！｣

｢今日も結ってないのか……。どうせ本人が気づいてないんだ。わざわざ謝らなくたっていいんだぞ、五虎退｣

薄墨色の長髪から虎くんを拾って、ようやく五匹一緒になったけど、安心できそうにない。

(兄さんはああ言ったけれど、三間半さんに謝らなきゃ…!)

見つかってよかった、と兄さんたちが広間に歩いて行く背後で、五匹いることを数え直して、腕の中の虎くんを抱きしめた。

どうやって、謝ろう。

……怖いわけじゃないんです。

三間半さんは、すごく優しくて、戦では敵を僕たちに近づけなくしてくれるし、兄弟と喧嘩したときは三間半さんのお部屋にいさせてくれる。かくれんぼのときも。

ときどき、兄弟にも内緒の宝物をお部屋に置かせてくれることもある。

だから、僕は優しい三間半さんが好き。
…だけど、三間半さんが優しいのは、僕が粟田口派の刀だからかもしれない。

薬研兄さんたちを特別慕う三間半さんだけど、他の皆にも同じく恭しい。

本来なら同列に戦に出るとは僭越なのです、と腰が低い理由を聞いたこともある。

(一介の槍だから銘のある「五虎退」の我儘を飲むのは詮方ないと思っていたら、どうしよう。)

虎くんをぎゅっとして顔を埋めてから、広間に駆けだした。

僕は、ただの短刀としての僕だって、あなたのことが好きだから。

｢と、虎くんがさっきまで三間半さんの毛先でじゃれついてて、…、ごめんなさい…！｣

｢まぁ、ご丁寧に。さすが五虎退さまですなも｣

たとえ、三間半さんが気づいていなくたって、僕は、ちゃんとお話ししようって思うんだ。