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恋がこんなに悲しいなんて。辛いなんて。
知らなかったんだ。
一度、傷つくくらいの恋愛をしたからきっと次の恋は。
もう恋愛なんて大丈夫だと、次は失敗しないと思っていた。
現実はそう甘くはないみたい。
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「よしっ」
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美容院で見た雑誌に載ってたヘアアレンジ。
ネットで調べてやり方やらを動画を見て覚えた。
白地にブラウンの花が散られてる浴衣に
裏地素材の帯。
お母さんに浴衣を着せてもらって、
厚底のサンダルを履いて出かける。
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浴衣は歩きづらいな、なんて思いながら。
短期バイトでもらったお給料で何を買おうか
想像するだけでワクワクする。
絶対にチョコバナナは食べるし、フルーツ飴も食べたい。
おみくじは1回だけやろうかな。
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「おぉ!A!かわいい!!」
「いーじゃん!似合ってる!」
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待ち合わせ場所へ行くと、
ネイビーの浴衣にえんじ色の帯をした真美ちゃんと
グレーの浴衣を着たなあくん。
既にお祭りに行ってたのか、なあくんの頭には
キャラクターのお面が付けられてあった。
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「ありがとう!」
「浮所にも見せてやりたいね」
「ちょっと直樹!、」
「ああ、いいの。大丈夫」
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正直なところ本当は浮所くんにも見てほしかったなって
ほんの少しだけ思ったり。
”いいね”の一言でもいいから、
それが聞けたらどんなに嬉しいんだろう。
祭りがどうとか、那須くんが言っていたけど
彼らは祭りに来ているのだろうか。
女の勘ってやつだけど、たぶん優実ちゃんと来てそう。
会いたいようで会いたくないような。複雑な気持ち。
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「おいしい!」
「ねえあと焼きそばとフランクフルトも食べよ!」
「直樹、どんだけ食べるの。」
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花火の時間まで屋台を回っている最中。
目的のチョコバナナを片手にたくさん食べたいなあくんと
それを止める真美ちゃんのやり取りを見ていると
どこからか私を呼ぶ声が。
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「暁ちゃん!」
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声のする方を見ると好奇心旺盛な顔をした那須くんの姿が。
こちらに手を振っているようで、その隣に浮所くんと優実ちゃん。
心臓がドクっと跳ねた。まるで嘘がバレた子供のように
どんな言い訳をしようか少ない脳みそで考える。
パチッと浮所くんと目が合った。
私を見てほほ笑んだように思えて。
声をかけようと口を開けたその時。
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浮所くんに耳打ちする優実ちゃん。
そして私の知らないくしゃくしゃな笑顔で笑う彼。
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Shiro.(プロフ) - 梨乃さん» 感想ありがとうございます!励みになります、うれしいです!!! (4月10日 11時) (レス) id: 5a97038d8f (このIDを非表示/違反報告)
梨乃(プロフ) - ものすごくキュンキュンしました!続きが楽しみです^_^ (4月8日 8時) (レス) @page36 id: 5cceb5056f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Shiro. | 作成日時:2024年2月26日 22時