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張り付いた空気の中。時計の音が妙に大きく聞こえて。
背中に感じる部屋の扉が冷たい。
高身長で私と目線を合わす様に。
私の肩の横で壁に手のひらを付けていた彼は、
肘に変えて距離がグッと近づく。
切れ長の目に思えてたけど、近くで見ると二重なんだなとか。
お肌ツヤツヤで赤ちゃんみたいだなとか。
鼻高いな〜唇の形綺麗だな〜とか。そんなことを考えていた。
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『なあ、聞いてんの?』
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彼の言葉にハッとする。
我に返ってやっと脳内整理が片付いて。
それから改めて感じる距離の近さ。
ドキドキ……ドキドキ……
まただ。また、心臓がうるさい。
だってこんなの。ズルいよ。
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「あ、の、?」
『隙ありすぎって言ってんの、』
「えと…それはどういう?」
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離れたくても、後ろが扉だから離れられない。
しどろもどろになってしまって。
あぁきっと今の動きキモいよなって自分でも思う。
どうしようもなくて下を向きながら彼に問うと
”隙ありすぎ”って言われた。
隙……とは?生まれて初めて言われたから
その言葉に対する言い返しが見つからなくて口がごもる。
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『だーかーらー』
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ハア、と一息ついて。いや、一息つきたいのは私の方だ。
彼の右手が私の頬を包む。
なんだか触れた所が熱くて。彼が私に触れると、
まるで私はおもちゃになったかのように固まってしまう。
そしてクイッと上に上げられ、彼に簡単に操られる。
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『男を呑気に部屋に上がらせんなって言ってんの』
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”俺じゃなかったら今、襲われてたよ?”と彼は続けた。
真っすぐ。それはそれは真っすぐ。私を見て。
浮所くんって本当に人と目を合わせるな。
男の子と目を合わせるのは苦手だけど、
浮所くんだったら大丈夫なように思えた。
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「私なんて誰も襲わないですよ」
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そして、私が彼と目を合わせることが出来たのには
もう1つ理由がある。
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『は?』
「私なんて誰も気にとめてないですから」
『何言ってんの?』
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それは、浮所くんが私を周りの女の子と同じ扱いをしてくれたから。
自信がなくてすぐへこたれる私は、
1歩後ろから賑わう空間を見ていた。
ただ眺めているだけの私に手を差し伸べるように。
1歩後ろにいる事なんて気づかない様に、彼は同じ扱いをしてくれた。
それがなんだか嬉しくて。
そう思ってしまえば、たまらなかった。
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Shiro.(プロフ) - 梨乃さん» 感想ありがとうございます!励みになります、うれしいです!!! (4月10日 11時) (レス) id: 5a97038d8f (このIDを非表示/違反報告)
梨乃(プロフ) - ものすごくキュンキュンしました!続きが楽しみです^_^ (4月8日 8時) (レス) @page36 id: 5cceb5056f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Shiro. | 作成日時:2024年2月26日 22時