一日だけ、恋をした。

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賑やかな通りに出てから安心したのか楽しそうにショップを眺めていた。

帽子屋の前を通り掛かり足を止めた俺を見て、入ろうぜと中に足を踏み入れた。
色々なデザインがあるなーと眺めている後ろ姿を見失わないようにと視界に入れながら、海外ならではのデザインに俺自身も興味を惹かれ何点かハットを手に取っては鏡で合わせたりしていた。

ふと視線を感じて鏡越しに目をやると、北山が随分と優しい目で俺を見つめていた。

そんな目を向けられるのは何だか久しぶりな感じがして気恥ずかしくて、気付かないフリをしてハットの鍔を必要以上に弄ってみせるとクスっと背後で可笑しそうに肩を揺らしていた。



「そんなに気に入ったなら買えば？」
「あー…うん」
「よく似合ってるよ」
「っ…そう？」
「あぁ、とっても」



今着ている服にもよく合っているとまで褒められてしまえば買わずにいる方が不自然に感じてしまい、単純にも会計の列に並んでいた。

支払いを済ませ振り返るとまた北山の事を好奇の目で見ている奴に気づいて、今度は声を掛けられる前に北山の手をさり気なく引いて店を出た。



「お、おいっ、どうしたんだよ」
「……北山さ…」
「んー？」
「…もう、俺から離れるの禁止な？」
「なっ、…何だよそれ」
「いいから。じゃないとホテル強制送還するよ」
「っ、わ…分かったよ」
「ん、なら良し」
「わ…っ」



素直に頷いてくれたことに安心して、ほんとに無意識に手が動いていた。
あ…あの…と困ったように見上げる瞳に首を傾げて、漸く自分が北山の頭を撫でていた事に気づきハッと手を離した。



「やっ、今のはその…」
「……」
「……っ…」
「…腹、へった」
「っ、え？」
「どっか食いに行こーぜ。ほらっ、あそこのバーガー店！きっとでっかいの出てくるぜっ」
「あっ、北山っ」



言った側から離れるとか馬鹿かよっと小声で呟きながら慌てて追いかけ店内へ入った。

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