一日だけ、恋をした。

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降り注ぐ陽射し、飛び交う英語、ブロンドヘアのグラマラスな女性。
開放的な街並みに、ここが狭い島国ではない事がまざまざと実感できて、眩しいほどに照りつける太陽から目を背けるように手を翳した。








小ぶりのボストンバッグを掛け直すと、背後からパタパタと駆け寄ってくる足音が聞こえた。



「悪い、待たせて」
「別に大丈夫だよ」
「うわー、あっちいなぁ〜」



同じく太陽を眩しそうに目を細めながら、引けを取らない眩しいほどの笑顔を俺に向けてきてこれからどうすると問い掛けてきた。



「とりあえず一回ホテル行って、フロントでボストンバッグ預かってもらう。持ち歩くにはちょっと邪魔だし」
「おー、んじゃ行きますか」
「……あぁ」



そう言って歩き出す北山の一歩後ろを追いかけるように歩き出した。



今回はプライベートではなく仕事でこの地にやってきた。
今まで海外ロケは何度かやらせてもらっていたけれど、何と初のMV撮りをここで行う事になったのだ。
とても光栄な事だし楽しみで仕方がないけれど、仕事で来ているのだから観光はできないだろうなと思っていたのだが、スケジュールの都合上俺と北山だけ前乗りする事ができ、今日は自由に過ごしていいからと謂わば束の間の休日のようなものをポンと与えられたのだ。

飛行機の手配もホテルもマネが整えてくれていて、明日スタッフさんやメンバーと合流するまでは北山と二人きり。
二人で旅行なんてこれだけ一緒にいながら初めての事で戸惑いの方が強くて、どんな風に接したらいいか勝手が分からない。



普通って何だっけ…。



そんな訳の分からない事を俺が考えている事を知ってか知らずか、北山もベラベラと喋るでもなく俺の少し前を歩いている。
小さいようで実は誰よりも大きな背中をぼんやりと見つめていると、ある事に気づいて慌てて目の前の背中を呼び止めた。



「ちょっと…」
「ん？」
「どこ行くの？」
「は？どこってホテル…」
「そっちじゃないよ。こっち」
「へ？……あ、ははっ、間違えちった」
「はぁ…」
「悪い悪い」



んははと笑って俺と並んで、藤ヶ谷居て良かったって見上げてきた。
つられて頬が緩めば、北山は更に嬉しそうに微笑んだ。

そうだ…これが普通だった。
変に気を張る必要はない。相手は北山なのだから。

ようやく肩の力を抜いて、今度は並んでホテルまでの道程を歩いた。

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