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すぐ目の前に、北山がいる。

思わず顔を凝視してしまうと、北山は困ったように眉を下げた。



「…あれ、もしかして…バレちゃった?」
「あ…っ…、……はい」
「わー、そっかそっか。
でも男性に知られてるのって何だか嬉しいな」



ロケの休憩時間でさーと屈託無く笑っている。
記憶と同じ…笑顔が、すぐに触れられる距離にいる。

…だけど、手を伸ばすことなんて許されない。
俺らはもう……アイドルと一般人なのだから。



「…えっと?」
「っ、あっ、ご…ごめんなさい」



あまりにも不躾に見つめてしまいもしかしてファンでいてくれてたりすると聞かれてしまった。



「…っ」
「へえー、ちなみに誰?一応全員揃ってるけど」



北山の後ろを見るとメンバーが軽く会釈をしてきた。



「…っ……北山…さん、です」
「あっ、俺?うわ嬉しいっ、いつもありがとう!」



北山はニコニコと人当たりの良い笑みを浮かべ俺に手を差し出してきた。
震える手で握りしめると、ブンブンと大きく手を振ってくれた。



「っ……あ…あの…俺…ほんとに、ずっと…好きで…ジュニアの頃…から…見てて」
「え、嘘!?それはすごいっ」
「えっと…あの……っっ……ふ…っ…」
「え…っ…、どした…?」



平気なはずだった。
どこかで生きていてくれたら、笑って過ごせているのなら、それだけでいいと本気で思っていた。

でもこうして間近で顔を見て…温もりに触れてしまったら…、もう耐えられなかった。



北山の人生の中に、俺はもういない。
笑顔も、歌声も、温もりも、俺に向けられる事はないのだ。



「おい、どうした?」
「あ…分かんね…、なんか急に泣いちゃって…」
「泣くほど感動してるんじゃない?
俺らのファンなんでしょその人」



違う…ファンなんかじゃないよ…
ほんとは俺だって…そこに居たはずなのに…



「……っ……やだ…」
「え?」
「…側に……っ…」
「…?」
「側にいて…っ」



生きてさえいてくれたら、なんて嘘だった。
本当は…ずっと隣に並んでいてほしかった。
顔を見合わせて笑いあう…、そんな日常を取り戻したかった。
こんな…こんな結果を、望んでいたはずじゃなかったのに……



使わなかった最後のカードはもう手元には無い。
俺と皆の世界はもう、交わらない…



抱きしめる事なんて叶わずに手をぎゅっと握りしめ、困らせていると知りながら…それでも次々に押し寄せる感情を抑える事ができなかった──…。






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設定タグ:藤北 , キスマイ , 藤ヶ谷太輔   
作品ジャンル:タレント
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絢音(プロフ) - 雪さん» 雪さん、こんにちは♪2度目の閲覧にコメントもありがとうございます(^^)本作のような切なめからのハピエン私も好きなので気に入って頂けて嬉しいです♪最近はすっかり書くのお休みしてしまっていますが、連載含めまた機動しますので、今後もよろしくお願いします(^^) (2021年10月29日 9時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 絢音さん、素晴らしいお話をありがとうございました!以前読ませていただいた記憶を辿り検索し、2度目。ハラハラと涙が止まりません 設定が凄くお上手で最後はやっぱり藤北の絆、キスマイの絆!ほっとしました (2021年10月20日 21時) (レス) @page50 id: 64ae229e91 (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - lastresortzipsaさん» こんにちは(^^)本作を見つけて下さりとても嬉しいです。他にも色々書いてますので、よかったらまた遊びにいらして下さいね♪ (2021年5月2日 16時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
lastresortzipsa(プロフ) - めちゃくちゃ泣けました!!!嗚呼、もうホントに、素敵な作品をありがとうござます。 (2021年4月30日 15時) (レス) id: 9ca8613eb3 (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - 雪さん» 雪さん、初めまして(^^)感想伝えて下さってとても嬉しいです♪本作は構成が難しかったですが、無事にハッピーエンドに創り上げることができ、またたくさんのお声を頂いて書いてよかったなと思えた作品です(^^)よければ他作にも遊びにいらして下さいね♪ (2020年3月8日 18時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:絢音 | 作成日時:2019年3月30日 3時

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