To Yours

やきもち ページ9

sideKi



一体何の時間なんだろう、これ。




「…あのー、玉ちゃん？」
「なにー？」
「えっと、もうそろそろいいですかね？」
「え、何言ってんの」
「……あー、うん、はい」



楽屋に入るなり、「みつっ、ちょっとこっち！」と大声で玉に呼ばれ、定位置に座る間もなく玉の側に行った。
途端ぎゅっと抱きしめられたかと思えば一向に離れる気配もなく、今は玉の膝の上に乗せられ後ろからきっちりホールドされている。



「はー、やっぱみつってちっこくてかわいーから癒されるわ〜」



聞けば、連日のドラマ撮影でストレスが爆発しそうでとにかく癒しを求めているらしい。
それがどうして俺をホールドすることに繋がるのかは分からないが、これでストレスが少しでも緩和されるというのならこの身を貸すくらい別にいいかと開き直り、手持ち無沙汰にテーブルのポッキーを摘んだ。



「あま…」
「あ、みつ何食べてんの？俺にもちょーだい」
「ほい」
「んー、おいひー」
「あはは、自由ですねぇ〜」



笑いながらポリポリと食べ進めていると、右の方から視線を感じた。
見るとジーッと俺らを睨んで来る目とぶつかった。



「…？」
「〜〜っ」



とりあえずにこっと笑いかけてみると、更に不機嫌な顔でズカズカと近づいて目の前にやってきた。



「玉っ、いい加減にしろよっ」
「えー、なにーガヤ」
「北山困ってんだろっ、離れろっ」
「みつ困ってるのー？」
「へっ？あ、いや…、うーん？」
「困ってないって」
「〜〜っ、北山は、俺のっ」



いや、お前のでもないっ。

内心とは裏腹に、俺の手をぎゅーって掴んで一生懸命引っ張って玉から離そうとする藤ヶ谷に、愛されすぎて困っちゃうなぁと頬がニヤける。



「あ、北山何その顔、玉の膝がそんなにいいの！？」
「へ？あ、いやこれは…」
「もーっ、きーたーやーまーっ」
「いやいや駄々っ子かお前はっ」



その内、もー飽きたからいーやって離す玉にまたギャーギャー文句を言いながら、今度は藤ヶ谷の膝に乗せられた。
しかもなんと向かい合う体勢で。



「ねぇ聞いてる？きたやま」
「んー？」
「だから、もう俺以外の膝乗るの禁止ね？」
「ふはっ」
「もー、笑わないで！返事は！？」
「はぁい」



重たいなぁ。かわいいなぁ。
ポッキーを手繰り寄せてまだブツブツ言う口に差し込めば、美味しいねってふにゃっと笑った。

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