ここから始まる二人

1（祝福） ページ1

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長年想いを寄せていた北山と晴れて恋人同士になって数日、今が幸せの絶頂にいるのかもなんて浮かれた思考を纏いつつ、迫り来る１７日に思いを馳せ一人ソワソワ落ち着かない日々を送っていた。



「え、みつの誕生日？」
「うん」
「え、まだ誘ってないの？」
「だってサプライズとかしたいじゃん！
色々準備とかしたりしてさ、喜んでもらいたいじゃん」



もうただのメンバーじゃない…恋人という位置づけになって初めての誕生日ともなれば、それはそれは忘れられないものにしたいではないかと、連日あれやこれや考えていて気づけば宮の誕生日も過ぎようとしていた。
さすがにそろそろまずいと焦りはじめ、なんやかんやで頼りにしてしまっている親友に今日も相談と称してぽろっと近況を報告していると、呆れたようにため息を吐かれてしまった。



「あーあ。みつ、忘れられてると思ってるんじゃないの？」
「えっ！？」
「知らないよ−？
みつ人気者なんだから、誕生日を祝ってあげたいって思う人なんかいくらだっているんじゃないの？」



例えば…と告げられた名前は大親友と公言している先輩たちのもので、苦虫を噛み潰したような心地になる。
サプライズなんてしないでただ一緒に過ごせばいいんだよと大人ぶって助言され、俺はまた頭を悩ませることになった。

とにかく約束をこぎつけないと…



仕事終わり、同じ階のスタジオにいるはずの北山を探して廊下を歩いていると、角を曲がったところで見知った後ろ姿が見えた。

北山…と声を掛けようとしたところで、北山は急にポケットの中に手を突っ込んでゴソゴソと動き始めた。
どうやら着信が入ってきたようで、ワントーン高めの声で電話に出る姿を足を止めて眺める。

よほど親しい人からの連絡なんだろうなと思っていると、聞こえてきた名前に酷く焦燥感を覚えた。



「あ、もしもしおーくら？
…おー、元気元気。え？１７日？夜？あー…」



聞き耳を立てているようで良い気分では無かったが、話題に上がっているだろう内容にとても冷静ではいられなかった。



いやだ…その日は俺が…



鞄を持つ手にぎゅうっと力が入るのも構わずに、次に続く言葉を息を飲んで待っている。

…いや、待っていたら空いているから行こうと肯定されてしまうかもしれない…、この際後で怒られたって構わないからあの電話を奪い取った方がいいのではないか…

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