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「…あのさ藤ヶ谷」
「ん?」
「えっと、…あっ、お疲れ様です!」
いきなり角から現れたスタッフさんにびっくりしていると、瞬時に切り替えた北山は仕事用のキラキラスマイルで挨拶を交わしていた。
口角を上げたままスタッフさんを見送った後で俺に向き直り、ふにゃっと気の抜けた笑みを見せた。
「やべ、局の廊下ってこと忘れかけてたわ」
ははっと笑う北山の手を引いて、エレベーターに乗り込んだ。
ほんの少しで下に着いてしまうけど、束の間でも二人きりになれるのは嬉しい。
偶然を装って指先に少しだけ触れてみると、ピクッと反応するのがかわいい。
気をよくして繋ごうとすると、先に気づいた北山にやんわりと制された。
「……」
「んはっ、何その顔」
よほど納得のいかない顔をしているのだろう、俺の顔を見てプッと吹き出した。
その顔をもっと見ていたい…、そう思うのは自然なことだった。
束の間の密室空間を経て駐車場へと向かう。
別々の車に乗る前にとさりげなく誘い文句を切り出した。
「…この後、暇?」
「え?」
「よかったら、家ちょっと来ない?
何ならそのまま泊まってもいいし」
「あー…、行きたいんだけど、俺まだちょっと家で仕事したくてさ」
「そっか」
端から二つ返事で了承されるとは思っていない。
俺も北山も今は舞台の仕事にほぼ拘束されているものだから仕方ない。
でもちょっとお茶する時間くらい…そう期待してしまったのも事実だ。
それを悟られまいと物わかりのいい顔をしてしまうのも、長いことこの仕事をして身につけた処世術だ。
「あんま、無理すんなよ?」
「ん、さんきゅ…」
藤ヶ谷も頑張りすぎるなよと下から覗き込まれ、思わずはい…と敬語になってしまった。
じゃあと言って背を向ける姿を見たら何だか途端に離れがたくなってしまって、気づいた時には、あのさっとやけに大きな自分の声が聞こえた。
「ん?」
「や、あの、…えっと」
無意識に呼び止めたもののその先の言葉が出てこない。
北山は不思議そうに首を傾げ俺の次の言葉を待っている。
何でも無いと言えばそっかで済まされることは明白で、考えの末にずっと頭を悩ませている本題を口にした。
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絢音(プロフ) - たいちゃんらぶさん» 本編のみったんはやや不安要素を残して終えましたが、アフターストーリーの番外編ではそんな杞憂も消えたいぴにすっかり心預けているみったんを描けていればなぁと思う次第であります(*゚▽゚*) (2020年3月18日 20時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - たいちゃんらぶさん» たいちゃんらぶさん♪たいぴの勘違いからコメディ風に進み、そして甘々シーンを経てより一層幸せな二人にできて私も嬉しく思います( ̄∀ ̄)♪Yの証人も楽しんでもらえてよかった〜♪ (2020年3月18日 20時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - ユキスケさん» ユキスケさん、お久しぶりです(^^)♪私まで優しくなれそう、そのお言葉に本作を創って良かったなと心から思えました…!Yの証人もありがとうございます(笑)第三者目線はなかなか新鮮で楽しく書けました♪ほっこり甘々な二人にできて良かったです(*゚▽゚*) (2020年3月18日 20時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - ピンクピーチさん» ピンクピーチさん、いつもありがとうございます♪今回は完全片想いから始まるという珍しい入りでしたが、甘々な着地にもっていけてホッとしております( ̄∀ ̄)横尾さんエピも楽しみながら追加しましたが、楽しんでもらえて良かったです(^^) (2020年3月18日 20時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - *コウ*さん» コウさん、初めまして(^^)序盤からもどかしい二人を見守って下さりありがとうございました!今回かわいめなきたーまさんを書けて私も大満足です(*゚▽゚*)また別の作品でお会いできる事を楽しみにしています♪ (2020年3月18日 20時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:絢音 | 作成日時:2019年12月21日 13時