Tresure box 〜北藤〜

foolな記念日 ページ26

リアル。エイプリルフールネタ。
切なめ→甘？
20代半ばくらいなイメージ。



sideF




嘘みたいだって、思ったんだ。





「好きだ」
「っ、え…？」
「俺と…付き合ってほしい」



急な発言に驚いて思わず自分の頬をぎゅっと抓った。
何してんだよって慌てて手を離された。

握られた手…、赤くなっちゃってんじゃんって頬を撫でられる指が…、夢じゃないって思わせてくれた。



「あ…」



言わなきゃ。俺も、きたやまのこと好きだって。

口を開きかけた途端、今日が何の日か思い出して一気に冷静になる。



そうだ…、今日エイプリルフールだ……。
なんだ、そっか…。



俺、揶揄われてんのかな？
罰ゲームとかしてる感じ？
嘘でしょって言って、何だバレちゃったかってネタばらしするの？

そんな思い通りになんてさせない。
例え今日いちにちだけだとしても、せっかく舞い降りたチャンスフル活用してやる。



精一杯の笑顔を作ると、きたやまは不思議そうに首を傾げた。
抱きしめるとすっぽりと収まる身体は、かっこいいきたやまのかわいいところ。



「俺も…、すきだよ」



絶対に、口にすることはないと思っていた。
ずっと側にいたいから…この気持ちは我慢しなきゃいけないって。

きたやまが悪いんだから…
そんな風に俺の気持ち弄んだりするから…



「…大好き」



ずっと触れたくて堪らなかった身体を大事に抱きしめる。
嘘みたいな…だけどこの一瞬は確かに現実だから、やっぱり嬉しくて泣きたくなった。



「そっか…」
「っ…」



嬉しそうに笑う気配を感じたとき、きたやまの手が背中に回った。



「ふ…、なんか格好つかねぇな」
「…大丈夫だよ、きたやまがちっちゃい事なんて最初から分かってるから」
「言ったな？寝起きの俺見て驚くんじゃねーぞ」



寝起き…
それを俺が見ることは、無い。

もうこの一瞬だけで良いから早く言ってよ、嘘だよって。
じゃないと俺…どんどん期待しちゃうから。



「よかった…、勇気出して言ってみるもんだな」



嘘には、聞こえなかったんだ。

2→←4

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す