ここから始まる…かもしれない二人

7 ページ7

暫く取り留めのない会話を楽しみながら順に運ばれてくる料理を堪能していると、横尾さんが思い出したように声を上げた。



「そういえば、今日キスログ更新したんだね」
「んー？あぁ…まぁね。だってさ、急に次の日誰も更新しなくなっちゃったら…可哀想でしょ」



昨日までの一年間は、より俺らを身近に感じていてほしいという特別企画の元、webログ毎日更新を掲げていた。
ほんとに誰一人…一日も欠かさなかったなぁ。



だからその反面、次の日誰からも更新がありませんでした、なんていうのは…あまりにも酷だなと思った。
それが良い方へ行くか悪い方へ行くかは分からなかったけれど、…きっと今日の更新は、喜んでもらえる誰かはいてくれるような気がしたから。



「…ふふ」
「何？」
「みつのそういうところ、すごい好きだよ」
「っ…な、何だよ急に」
「そうやってすぐ照れちゃうとこもかわいい」



俺も更新しようかなって言いながらスマホを弄り出す姿を眺めながら、唐突に褒められた意図を必死に考えていた。
よし…投稿完了っと呟いてスマホを置いた瞬間、ある一つの仮説に辿り着いた。



「……っ、さてはお前ら…グルなのかっ！？」
「へ？」
「だからっ、よこーさんも藤ヶ谷もっ、二人してなんか俺を揶揄ってるとか！？」
「何の話？」
「だから昨日のっ…、……よこーさん、…藤ヶ谷から何も聞いてない…？」
「え？」



そうして俺は、昨日の祝賀会の時に隣に座っていた藤ヶ谷から言われた事を掻い摘んで話した。
黙って話を聞いていた横尾さんは、あちゃーと顔に手を当てて苦笑した。



「あー…、素直ってそっち行っちゃったのか…ふふ」



何やら一人で勝手に納得して笑みを浮かべる横尾さんがひどく焦ったくて、なんか知ってんなら言えよと足を伸ばして軽く蹴った。



「あ、こらお行儀悪い」
「ねぇ、何なの？…ほんとに俺の事揶揄ってるの？」



二人がそんなタチの悪い事するような奴じゃないって分かってはいるけど…頼むから違うって言って…。



「あっ、違う違う！誰もみつの事揶揄ってなんか無いから。ごめんね、そんな顔しないで？」
「…っ」
「俺も太輔も、本心しか言ってないよ」



ちゃんと違うと否定してくれた事にとても安心して…でもそうしたら本心って言うのは、やっぱり…俺の自惚れなんかじゃないって事なのかと頭を抱えた。

そんな俺の様子を見て何かを感じたのか、横尾さんはあからさまに話題を元に戻した。

8→←6（思案）

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す