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楽屋でもふとした瞬間、いつも藤ヶ谷のことを目で追ってしまう自分がいた。
横尾さんと楽しそうに話してる時は何話してんのかなって気になったり、玉とファッション雑誌眺めて静かに笑ってる時は気になるアクセサリーでもあったんかななんて考えたり、ふと目が合って微笑まれると身体の内側からカッと熱が湧き上がるような感覚が押し寄せたりして…
『…あんまり、近づかないで』
だから、いきなりこんなことを言われた時は正直焦った。
焦って…、嫌われてしまったかも知れないと、指先が冷えていく感覚がした。
不思議だよな、お前が俺のことを好きだという気持ちは知っているはずなのに、臆病な俺は見えない何かに釘を刺されたような心地になったんだ。
そんな俺の思考なんて少しも知らず、その後に続いた「あまり寄られると触りたくなるから」と困ったように白状する藤ヶ谷に、嫌われた訳ではないのだと息を吐き出して、やっと血の巡りが正常に感じられた。
『困るでしょ…?だから俺に好かれてるって早くちゃんと自覚してよ』
耳元で甘く囁かれて、楽屋にも関わらずみっともなく狼狽えて横尾さんに助けを求めた。
横尾さんに抱きついても何とも思わないのに、藤ヶ谷に少し触れられただけでどうしてこんなにも鼓動がうるさく高まっていくのか…
俺はまだ分からないままだった。
だからあの日、優しい微睡みの中で感じた唇の温もりでさえも…起きたら夢を見ていたのかも知れないと思ってしまった。
藤ヶ谷の側にいる度、あれは本当に夢だったのか…現実だったのではないだろうかって葛藤する日々が続いた。
たった一言、俺にキスしたかと訊ねれば解決する問題だったが、さすがにそう訊くほど無神経ではなかったし、藤ヶ谷も事実を答えるとは思わなかった。
俺に気遣って、無かったことにするかもしれない…
藤ヶ谷はそういう奴だから。
寝ても覚めても頭の中は藤ヶ谷のことばかり。
そんなことでいいのか?
いっそもう…全部忘れてしまえばいい。
気づき始めている想いは全部追いやって、藤ヶ谷のこともちゃんと断ればいい。
そうしたらきっと…前みたいに戻れる。
それなのに、俺に笑いかける藤ヶ谷の顔を見たらそんな決心も簡単に揺らいで、もっとこの笑顔を独り占めしたいと思うようになっていた。
俺の隣で、もっと笑っていてほしい…
この笑顔だけは、何があっても無くしたくないと…
答えなんて案外、単純なものだった。
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絢音(プロフ) - みーちゃんさん» みーちゃん♪この度は良縁に恵まれ、直接生の感想を頂くという尊い時間をありがとうございました!いやはやしかし生談義は良いですなぁ〜(*゚▽゚*)これからも素敵な藤北お届けできるように妄想に励みます←笑。 (2019年10月27日 11時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - もえさん» もえさん♪たいぴの胸にお顔ぐりぐりみったん、会員向けプレミアム雑誌(空想)に載せてもらいたいですよねぇー!それだけで我々は生きていけますね(^^)2人のもだもだした恋愛の行く末を見届けて下さりありがとうございました!番外編も頑張ります! (2019年10月27日 11時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - たいちゃんらぶさん» たいちゃんらぶさん♪読み返しのところの追描写に納得してくれてホッ…。気持ちを自覚してからのみったんはかわいいの宝庫でしたね!笑。番外編も引き続き楽しんでもらえるように執筆中でございます♪いつもありがとうございます! (2019年10月27日 11時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - ここさん» ここさん♪確かに、自分を北山さんにと太輔さんにと置き換えてみても双方とお付き合いしたくなるような魅力が詰まっていますよね(^^)そんな素敵な2人が無事にくっ付いて作者もホッとしているところです。番外編はひたすらに甘々いちゃいちゃさせたいと思いつつ…笑 (2019年10月27日 10時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - ちぐさん» ちぐさん♪ようやくみっくんの心を手に入れた太輔さんはこれからいっぱい幸せな気持ちで満たされることでしょう!次は身体も…(〃ω〃)でもその描写番外編に入るかな…?ありがとうございました! (2019年10月27日 10時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:絢音 | 作成日時:2019年8月10日 23時