ここから始まる…かもしれない二人

28（告白） ページ28

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偉大だった、俺らの育ての親みたいな人のお別れ会に参列して…、感傷に浸る間もないまますぐ舞台の夜公演に思いを馳せる。

もう何度目かの公演をこなしているものの何度やっても“ 慣れる ”という事はない。
今夜も壇上に足を付け、深呼吸をした後鋭い目付きで客席に顔を向ける。

そこから先はもう俺自身ではなくて、役そのものへと切り替わる。
全然別の人格が憑依しているような不思議な心地に襲われて、頭に叩き込んだ台詞も立ち位置も…まるで定められていないものかのようにスッ…と身体が自然に動いていく。

そうしてカーテンコールでたくさんの拍手に包まれた瞬間、俺はまた“ 自分 ”に戻ってくる。



あぁ…、これが舞台だって、全身から感じるこの瞬間は堪らなく快感で…、胸の奥底からジワジワと高揚感が押し寄せる。

自分はとことん芝居が好きなのだと、何とも言えない幸福感で満たされる。

どんなに毎日が大変でも、時間の流れに押し潰されそうになっても、この一瞬で全て報われる。
それは舞台も、LIVEだって同じ事だ。
この仕事をしていて良かったと…胸を張って言える。



……今日も、そっちから見守っていてくれていますか？



一度で良いから、見てほしかった。
あの笑顔が…もう一度見たかった。



お別れ会をしたって、次に気持ち切り替えなきゃと分かっていたって、やっぱりそう簡単に割り切れるものではない。
だって俺をこの世界に導いてくれたのは、間違いなくあの人だったから……









楽屋に戻っても何故かまだ着替える気力が湧かなくてソファーに座って項垂れていると、すぐ外から遠慮がちにドアをノックされた。

そろそろ支度しないとマズイよな…

スタッフさんかマネが来たものだと思い腰をあげると、次に聞こえてきた声に慌ててドアを開けた。

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