ここから始まる…かもしれない二人

19（電話） ページ19

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ここ最近はずっと朝から晩まで稽古場に缶詰状態になっている。
本番まで着々と時間が近づいていて、だんだんと自分の中で焦りが出始めているのを感じていた。

俺は座長だから、弱音なんて吐けない。
ベテランさんもいる中で、自分が引っ張っていかないといけない。

楽しさや興奮の中で、隠しきれずにいる負の感情をどうにか周りに悟られないようにと…とにかく必死だった。








「はぁ…」



今日もログを更新できなかった。
なるべくなら近況をお伝えしたいところではあるけれど、最近ほんとに時間が取れない。

ご飯も睡眠も極限まで時間を削ってでもやらなければいけないことが山積みで…、いっそ発狂したくもなる。

なんて、そんなことをしたら心配性のマネあたりに病院に放り込まれるのがオチだからやらないけれど。



「……ハー…」



疲れてる。
厄介なのは、疲れを取りきる前に新たな疲れが押し寄せて自転車操業になっているということ。

俺にとっての疲れを取る方法は、入浴だったりアロマたっぷりの寝室でぐっすり眠ることだったり、好きな本を読んだり…。
でも今はそのどれもに悠長に時間をかけている余裕は無い。



…そんな方法よりももっと、短時間にして最大限に癒される術がある事を実は知っているのだが…、それを奪われてしまっている状態だから、コンディションが優れないのだということを充分に理解してしまっている。



「……会いたいなぁ…」



北山…。
メンバーとの仕事は明後日。明日はまだ会えない。

そんな状況で自分はこれ以上頑張れるだろうか。



「……」



会いたいって言ったら、さすがに困らせるよな…。



気持ちは伝えたけれど、頑張るチャンスをくれたけど、…決して甘やかされる立場にいる訳じゃない。

でも…

スマホを取り出して連絡帳の数字の羅列をガン見する。
プライベートの用事で掛けた事なんてあったっけって思うくらいには長い事連絡していない。



…そもそも、まだこの番号繋がるのかな？



タップした事は思い出せないけれど、何度もその番号を眺めているからいつの間にか数字の配列は覚えてしまっていた。
無意識の中指はその数字をタップしていた事に気付いたのは、手にしているスマホから北山の声がしたからだ。

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