ここから始まる…かもしれない二人

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「っ、ふ…藤ヶ谷…っ」
「宮、北山どうだったの？」



止めろ離せとバタつく北山をシカトしながら宮に笑顔で詰め寄ると、宮はたじろぎながらも北山の様子を話してくれた。



「きたやんね、観劇中ずっと腕組みながら真剣な表情でいたんだけどね、ジュアン様の激しい絡みの時には口ポカンと開けてたし、苦しそうな顔してる時には同じような顔になってたし、山場のシーンなんか目うるうるさせながら真剣に見ててさ、ほんとかわいかったんだよっ」



宮の口から語られていくほど、北山の顔がどんどん赤くなっていった。



「なっ…、お前そんっなに俺の事見てたのかよっ」
「だってガヤさんの舞台きたやんがどんな顔で見るのか気になるじゃん」
「〜〜っ、藤ヶ谷観にきてんだから藤ヶ谷見ろよお前もっ」
「えー、もちろんちゃんとジュアン様も堪能させてもらいましたよって」



あぁ…、前言撤回。

北山が事前に来るって分かっていて、もしもそんな顔した北山が一瞬でも視界に入ってしまったら…俺は果たして冷静に演じられていただろうか。
やはり知らずにいてよかったかもしれないと、宮の話を聞いて心から思った。



「ごめんね北山、刺激強すぎたかな？」
「……お前この手離した瞬間ぶん殴るぞ」
「ふふ、それじゃあずっと離せないな」
「っ、じょ…冗談だって…。
手なんかあげねぇからそろそろ離して」



いい加減恥ずいわこの体勢と呟く北山の顔を正面から見ている宮が、わぁ…と目を丸くした。



「ふふ、ガヤさんそろそろ離してあげて？
きたやん顔めっちゃ真っ赤になってる」
「え？」



そんな顔はぜひ見ておかないとと覗き込もうとした瞬間、強めな力で振り解かれ北山は宮の後ろに隠れてしまった。



「あらま」
「ふふ、ガヤさんまだその格好のままだし、きたやんも恥ずかしいんじゃない？」
「…北山もジュアンに抱かれたの？」
「…お前ほんとマジで黙れって」



宮にギュッと後ろから抱きついて顔を隠す様に何だか複雑な気持ちが込み上げる。

宮に対しての嫉妬ではなく、もう一人の自分にだ。



俺の好意にはここまで反応を見せないのに、ドン・ジュアンにはそんなに取り乱すほど心奪われているのかと…。
どうしてそういう仕草を俺自身には見せてくれないのかと。

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