検索窓
今日:2 hit、昨日:5 hit、合計:200,728 hit

8 ページ20

「スープ…野菜くたくたに煮込んでくれてるね」
「ほんとだ…、ありがたいねぇ」
「ふふ…」
「……」



食べなきゃいけないのは分かっている。

だけどどうしても匂いを嗅ぐだけで喉奥がグッと苦しくなって受けつけない…。
食べたら吐く…そればかりをグルグルと考えて、食べるのが怖いと思ってしまう。

浮かない表情の俺を心配そうに見つめてくれている顔を見て、ゆっくりとスプーンを掴む。
掴んだままやはり手が止まる俺を見て、太輔は俺の真横に座って俺の手からそっとスプーンを抜き取った。



「……怖いよね」
「っ…」
「あんな苦しいの、もう嫌だよね…。
でもね、もう無理にいっぱい食べなくていいんだよ。
ちょっとでもいいの…、きたやまが美味しく食べられる量だけで大丈夫なんだよ」



優しく背中を撫でながら、大丈夫だと語りかけてくれる。

最初はひと口だって構わない…ちょっとずつ増やしていけたらいいんだよって言ってくれて、あぁ…ひと口だけでもいいんだって安心できたら、不思議と食べられる気がしてきた。



「大丈夫…きたやまの好きな味のはずだよ」
「……ん…」
「…お口開けて?…ん、そう…ゆっくりでいいよ」



ほんとにちょこっとだけスプーンに掬われた量を見てそれなら平気だって思わせてくれた。
口を開けるとゆっくりとスプーンが中に入ってくる。
薄いコンソメと野菜の甘みがするスープは確かに胃に優しそうで、ゆっくりと舌の上で味わった後、恐る恐る飲み込んだ。



「…っ、んっ…」
「大丈夫…大丈夫だよ、落ち着いて…」



胃がぐるぐると暴れ出しそうな感覚に思わず口元を抑えると、太輔が優しく背中を撫でてくれて、速くなりそうな呼吸をどうにか落ち着かせていると、戻さずに吸収する事ができた。



「ぁ…」
「食べれた…、食べれたよきたやまっ」



やったね、良かったねって嬉しそうに涙目になる太輔を見てつられて俺も泣きそうになってしまった。
もうひと口食べてみるか訊かれて頷くと、本当に嬉しそうに笑ってくれた。

それからゆっくりと時間を掛けて、スープを半分と、おかゆもほんの少しだけど口にする事ができた。

9→←7



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (285 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
580人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

絢音(プロフ) - はっちみつさん» はっちみつさん、初めまして♪作者の北藤を愛でて下さりありがとうございます(^^)こちら現在連載中の「俺とお前のHUGKISS」へと続いておりますので、よければそちらもぜひ遊びにきて下さると嬉しいです♪今後も北藤は強く推していきたいと思います! (2019年7月29日 0時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
はっちみつ(プロフ) - はじめまして。こんなに素敵な北藤に出会えて感激してます。漢みっくんと可愛いたいPを今後も楽しみにしてます! (2019年7月28日 22時) (レス) id: 4caade0e16 (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - さくらさん» さくらさん、初めまして♪日頃よりリピートして頂いているようで嬉しいです♪北藤はまだまだマイナーのようですが、北藤ちゃんの可愛さがもっと浸透すればいいのにと思う今日この頃です(^^)かわいい太輔さん、お届けできるよう頑張ります♪ (2019年7月26日 14時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - めぐさん» めぐさん、初めまして♪北藤の沼もハマってしまえば底無しなので、これからも細々と普及活動を行いつつ北藤ちゃんを愛でていきたいと思います!移行先でもまたお願いします(^^) (2019年7月26日 14時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - はじめまして。この作品の北藤が好きすぎて、いつも更新を楽しみに見させて頂いています(´-`)他の作品も何度も読み返してしまうほど好きです。私は北藤が好きなのですが、あまり北藤の小説を見つけないので嬉しいです!これからもかわいい藤ヶ谷くん楽しみにしてます! (2019年7月20日 23時) (レス) id: 3c1a22a277 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:絢音 | 作成日時:2019年6月15日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。