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扉を開けるとかつての少年──ここでは青年の方が正しいか──がふらりと立っていた。
｢！？シャークん？どうしたの？｣
大雨の中そこそこの距離を歩いてきたのだろう、雨水が彼を覆っていた。
｢と、とりあえず体拭こう。タオル貸すから。あとお風呂も沸かすから待ってて｣
大型犬さながら、ずぶ濡れの黒髪をわしゃわしゃと拭いてやる。
彼は無言のまま立ち尽くしている。
このままでは口を開かないだろう。
いつかの夏休みの終わり、玄関口を通せんぼしていた彼のようだ。
服も着替えて貰い、シャワーに入れた。
さっきまで焦り過ぎて気付いていなかったが、彼は制服姿だった。
数少ないハンガーにかけ、ドライヤーで乾かしてみたり、扇風機を当ててみたりしたが、自然の力には遠く及ばず。為す術なく、コーヒーを入れた。俺自身、コーヒーはあまり好きではないが、彼は小学生の頃からチョコはビター派だった。恐らく、甘いものは好んで食べないだろう。
｢風呂、ありがとう｣
久々に聞いたその声は、記憶よりも遥かに低くなっていた。でもたったそれだけ。
そういえば白い肌も新芽のような瞳も、真っ黒な髪も、彼を彩るものは何も変わっていない。宝物を見つけたような気分だ。変わらない物を見つけることってこんなに嬉しいものなんだ。
｢おかえり、とりあえずコーヒー｣
｢ん、ありがとう｣
数年ぶりの会話なのにすっと脳みそに馴染んだ。低くて通りずらい声はフクロウの鳴き声のようで心地よい。
｢何があったか、聞いてもいい？｣
｢…うん。｣
重々しく、ゆっくりと語る。
簡潔に言うと、高校に進学するにあたって両親と揉めたらしい。
どうしても行きたいと言う高校が東京のずっと都市部にあり、現在彼の住んでいる家からはかなり遠くなってしまう。だから一人暮らしをしたいと了承を得ようとしたが見事に撃沈。
彼の両親も、彼を心配した結果だ。
そこでひどい喧嘩になったようで、口喧嘩を超えてしまった矢先、人に手をあげてしまった自分に失望し、はるばる歩いてここに来たと言う。
そこまで感情的なやつだっけ、と思ったのが第一印象だ。まぁ、この時期に両親と揉めてしまうのは良くあること。
ほとんどのものは時間が解決してくれるが、今回ばかりはそうでもない。
俺にはどうとも言えないし、ここで慰めていいのかすらわからない。
｢とりあえず…今日は泊まってく？｣
無言のままこくりと頷く。
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アサギ(プロフ) - つくねさん» コメントありがとうございます！返信が遅れて申し訳ないです！言葉選びは自分でもかなり気を使っているので褒めて頂けてかなり嬉しいです。応援ありがとうございます！ (12月21日 23時) (
レス) id: e6d6a81c58 (このIDを非表示/違反報告)
つくね(プロフ) - 初コメ失礼します！言葉選びがどれも美しすぎませんか！？もう推しが尊すぎて悶えてました……！応援しています！！！ (11月6日 23時) (レス) id: 8fd93ec4db (このIDを非表示/違反報告)
奏<そう>(プロフ) - 絵が上手い…!!好きだ…嗚呼…(言葉にならない感動) (5月23日 20時) (レス) @page8 id: 4d184c9d16 (このIDを非表示/違反報告)
まりん - 遅くなってしまいすみません…！sm×knの方も最高でした…！リクエストお答えくださりありがとうございました！！😭これからも更新楽しみにしております…！ (2023年5月4日 12時) (レス) id: b747b8200d (このIDを非表示/違反報告)
アサギ(プロフ) - まりんさん» コメントありがとうございます。希望に添えてて良かったです！ちなみにですが『茜を飲み込んで、その後に』の続編(smkn)も書くつもりなので是非読んでください！ (2023年4月27日 23時) (レス) id: e6d6a81c58 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アサギ | 作成日時：2023年4月20日 21時
