▼ ページ14
｢ゴム…ポッケの中入ってるから｣
｢え…｣
あまりにも可愛すぎるお誘い。
流石の大雨も隠しきれないかもしれないほど。
こんなお誘い受けてしまえば僕の遊び心なんて木っ端微塵に砕け散る。
｢えっちになったじゃん｣
語尾に音符でも着きそうな程ご機嫌な声だと自分でも驚く。
｢誰のせいかな｣
彼もまた、ご機嫌な声でそう呟く。
売り言葉に買い言葉とは恐らくこのこと。
そうやって煽っても激しくなるだけなのに、と内心ほくそ笑んだ。
彼のポッケの中からゴムを取り出す。
それを見つめた彼はごくりと喉を鳴らした。
食べられることの高揚、快感への期待。多分ちょっと不安も混ざっている。
｢大丈夫、痛くしないよ。｣
｢ほんと…？｣
ああ、やっぱり無理かも、なんて言うのは紳士じゃないかもしれない。
でも、本当に優しく出来る自信が無い。
僕だって、かわいくて綺麗な恋人をこの手で乱せるという興奮と期待でいっぱいいっぱいなのに。
目の前の彼はそんな僕の様子も露知らず、得られるであろう快感を大人しく“待て”している。
ちらりと紫色が一瞥する。
微かな雨の匂いと、甘い香りと、君。
腰に手をかける。
＊
少し湿った肌着に、汗ばんだワイシャツ。
やっぱり優しくなんて出来なかった。
｢ぶるーぐ…水。｣
｢はいはい。｣
いつも使わない喉をかなり酷使したのだろう、何だか声が男前になっている。
取ってきた水を渡すと渋い顔をした。
｢ぬるい”…｣
｢だってさっき買ってきたやつだもん。｣
｢…なんで冷やしでねぇんだよ。｣
1口飲んだコップを差し出す。
氷を取って来いとのことらしい。
｢スマイルが可愛かったからかな。｣
触れるだけのキスをして、さぁ姫さんの望み通り氷を入れに行こうか。
腰を浮かすとくいっとすそを引かれ、戻される。
｢まだ…いがないで欲しい…｣
誘う瞳とはまた違う、甘える時のもの。
｢ふへっ…うん！そーする！｣
｢…なにニヤニヤしてんだよ｣
｢いーやなんも！幸せだなーって｣
少し赤みがかった茶色の髪を撫でる。
さっきまで散々に降っていた雨は段々と弱まりつつあるようだ。
｢そーかよ｣
───────
あとがき
7月から始まる新シリーズに基づいてる訳では無いですが無性に雨の描写が書きたくなりました。
オメガバースとか言っときながらあまり要素が入れられなかったのは反省です…
長らく期間が空いてしまって申し訳ないです。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 124人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アサギ(プロフ) - つくねさん» コメントありがとうございます！返信が遅れて申し訳ないです！言葉選びは自分でもかなり気を使っているので褒めて頂けてかなり嬉しいです。応援ありがとうございます！ (12月21日 23時) (
レス) id: e6d6a81c58 (このIDを非表示/違反報告)
つくね(プロフ) - 初コメ失礼します！言葉選びがどれも美しすぎませんか！？もう推しが尊すぎて悶えてました……！応援しています！！！ (11月6日 23時) (レス) id: 8fd93ec4db (このIDを非表示/違反報告)
奏<そう>(プロフ) - 絵が上手い…!!好きだ…嗚呼…(言葉にならない感動) (5月23日 20時) (レス) @page8 id: 4d184c9d16 (このIDを非表示/違反報告)
まりん - 遅くなってしまいすみません…！sm×knの方も最高でした…！リクエストお答えくださりありがとうございました！！😭これからも更新楽しみにしております…！ (2023年5月4日 12時) (レス) id: b747b8200d (このIDを非表示/違反報告)
アサギ(プロフ) - まりんさん» コメントありがとうございます。希望に添えてて良かったです！ちなみにですが『茜を飲み込んで、その後に』の続編(smkn)も書くつもりなので是非読んでください！ (2023年4月27日 23時) (レス) id: e6d6a81c58 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アサギ | 作成日時：2023年4月20日 21時
