第2話 ページ5
二百三十年前
短刀を横に引くために手に力を入れる
綺麗な紅い華が咲いた
何も出来ない虚しい人生だった
誰も愛さず、誰も愛されず
向けられたのは、劣情のみ
そんな人生だった
そんな
そんな
「辛いな…」
薄れゆく意識の中、掠れた今にも消えてしまいそうな弱々しい声でそう呟いた
切り傷が浅かったのか、即死ではないみたいだ
焼け付くような痛みが襲う
来世は、幸せに暮らしたい
貧しくてもいいから、私を愛してくれる人と共に生きたい
けど
そもそも来世などあるのだろうか
人は死ぬと天国地獄に行くと聞いた
果たしてそんなものがあるのだろうか
私はここで死んでどうなるのだろうか
消えてしまうのかな
暗闇を一生彷徨うのかな
でもまあいいやそんなこと
幸せになりたかった
一筋の涙が零れ落ちた
襖から、光が差し込んだ
誰かが部屋に入ってくる音がした
「おい、誰か！糸乃が首を切りやがった！」
ドタドタと聞こえる足音
最期ぐらい静かにしてと思う
「まだ、息はあるぞ！医者を呼べ！」
助かるわけないのに
「こんなに良い商売道具を失ってたまるかってな」
私は道具か
「まぁ、糸乃さんが…」
「大丈夫かしら？」
よく言えるよ、そんなこと
椿を殺したくせに
内心喜んでるんでしょ
「お前達は、出とけ！医者まだか！」
「今向かってるそうです」
「くそっ、こんなに早く死なれちまったら人殺してコイツを手に入れた意味が無いだろう…」
今なんて言った
人を殺して、私を手に入れた
人って誰を
そんな
まさか
「こいつの親を殺してよ…」
父さんと、母さん？
私は親に捨てられたって
そう聞いたのに
「大金払うつったのに、抵抗するから… あっー、くそっ！」
抵抗した？
私を守ってくれた？
私を愛してくれてたの？
私は幸せだったの？
こいつらが、奪ったの
私の幸せを
聞こえないと思ったのか、自らペラペラと過去について喋り出す男
許せない
真っ黒い感情が生まれる
許せない
糸乃の無垢な心を汚していく
許せない
禍々しい憎悪は溢れ出し
殺してやる
全てはここから始まったのだ
続く
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くり(プロフ) - 続きお願いします。めちゃくちゃ楽しみにしてます！！ (2019年10月20日 22時) (
レス) id: 8901526dce (このIDを非表示/違反報告)
もっ - 名前変更ができないバグが起きてます…対処お願いします。 (2019年10月11日 13時) (レス) id: c9f0456c30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Melt | 作成日時：2019年9月2日 21時
