273:どデカいの ページ20
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それからすぐにお席時間ですって店員さんに声を掛けられて、私達は店を出た。
正直助かった、と思った。
会計を済ませて足早に店を出た私を、樹は必死に追いかけてきて。
「ちょっと待てって、A」
呼吸を荒くして、私の腕を掴む。
「ごめん、ちゃんと菊池くんたちに挨拶してなかった…感じ悪かったかな」
目を合わさずに早口でそう言った私に、また樹は気まずそうな顔をして。
「大丈夫。落ち着いてるよ?」
何も聞かれていないのに私がそう答えると、樹は余計に苦しそうな顔をした。
「ごめん、俺……」
「大丈夫だよ、全然。……気にしないで?」
樹が言おうとしてることくらい…分かる。
そんなの、樹は何も悪くないのに。
「本当…気にしないで良いから。私大丈夫だから」
それからはもう、本当に酷くて。
一週間ほどが経った日のこと。
「ちょっとA、なにこの部屋!」
玄関にはパンプスやスニーカーが転がっていて、ソファには脱ぎ捨てままのスーツ。
テーブルには昨日の朝食べたコンビニのおにぎりのフィルムと、インスタントのお味噌汁のカップがそのまま。
汚っ!って、夜中に急にやって来たリサに怒られた。
「ちゃんと掃除しなよ。虫来るよ!虫!A退治できないんでしょ?」
夏になったら出てくるあの気持ち悪い虫。
小さい頃からほんっとーーーにダメで。
一人暮らしが始まってからは、ありとあらゆるSNSを使って調べて、できる限りの対策して。
マンションの入口に居た時は、北斗くんに電話してやっつけてもらって。
こうやって。
ちゃんと部屋掃除しなよって、北斗くんもよく私に言ってた。
「ちょっと…最近バタバタしててさ」
「それにしてもズボラすぎ!さすがにここまでじゃなかったでしょ。どうした?何かあったの?」
あった……ね。
どデカいのが。
「樹に聞いたの?」
そうじゃ無かったら急に来たりしないでしょ?
お節介な樹の事だし、きっと話したんだ。
「うん、ほら。これ」
見せられたのは樹とのトーク画面。
〈Aのこと、ちょっと様子見てやって〉
たった一言。
それに、送られてきてるの30分前だ。
「ごめんね、いつも」
また、きっと急いで来てくれた。
「ほら、掃除掃除。ゴミも捨てなってちゃんと!」
「…ごめん」
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chaka(プロフ) - らいおんさん» らいおんさん、大変大変お返事遅くなりました……💦すみません!夢主ちゃんの長年の恋がやっとやっと実りました!!超絶拗らせてる大我先輩には心臓取られちゃいますよね😂 (1月4日 18時) (レス) id: 93153d1174 (このIDを非表示/違反報告)
chaka(プロフ) - JUJUさん» JUJUさん、大変大変お返事が遅くなり申し訳ございません💦おにいちゃんのともだちから!ありがとうございます🥰続編希望嬉しいです!いつか出せたらいいなと思ってますのでお楽しみに😌🫶 (1月4日 18時) (レス) id: 93153d1174 (このIDを非表示/違反報告)
chaka(プロフ) - 名無し78305号さん» 名無し78305号さん!コメント嬉しいです🥰だいぶ長編だったのにイッキ読み!ありがとうございます🥹💘私もこのお話の大我くんに恋しちゃってます😭(笑)続編希望嬉しいです!前向きに検討させて下さい🌸 (1月4日 18時) (レス) id: 93153d1174 (このIDを非表示/違反報告)
名無し78305号(プロフ) - 答え合わせを一気に読ませていただきました!終始涙が止まらず、今もずっと大我先輩に恋してしまっています😭🥺🤍もしよろしければ続編を大変希望しておりますのでどうかご検討の程よろしくお願いいたします🙇♂️🥺 (1月4日 5時) (レス) id: 51150dac50 (このIDを非表示/違反報告)
JUJU(プロフ) - おにいちゃんのともだちから戻ってきて改めて読みました!続編希望しすぎてます😭😭 (10月16日 20時) (レス) id: 20091c0e6c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:chaka | 作成日時:2022年11月26日 18時