２２５：貸し出し中 ページ5
.
「図書室はね、やっぱり私にとって特別な場所だったの」
「……京本との思い出が詰まってんだもんね」
「まあ、振られたのも図書室なんだけどね」
私がそう言うと、無言で頭を撫でてくる。
「本当…ダメだよね」
「ん？」
「樹の言った通りだよ」
「・・・」
「いつまで引きずれば、気が済むんだろうね」
「A、」
「約束……守らなかったバツかな？」
「約束？」
��守れよ、約束��
たしかに……あの時、そう言われた。
「好きにならないって約束、分かったって言ったのに私が破ったから……」
「そんなこと……」
「北斗くんの忠告も無視した私がダメだったんだよね」
「A、もう」
「ごめん。北斗くん…」
「なに？」
あぁ、もう。
「ちょっとだけ……泣いていい？」
「有料ね、高いよ」
「え？」
「ほく兄の胸貸し出し中」
そう言って、ふわっと抱き締められた。
大我先輩よりも少しだけ高い背。
大我先輩よりも大きな背中。
目の前いっぱいに広がるあの頃の制服。
北斗くんの制服の第二ボタンは付けられたままで。
やっぱり第二ボタンって、いちばん心臓に近いんだ。
「良い子良い子。ほら、泣いていいよ」
「……ごめっ…ん」
「京本と出会わなかった方が良かった？」
「……え？」
「そしたらさ……あ、いやごめん。なんでもない」
大我先輩と図書室で出会わなかったら。
今頃どうしてたのかな。
北斗くんのこと、好きになってたのかな……。
付き合ったりとか、してたのかな。
今ここでそんなことを思うなんて。
だけど、もしそうだったら。
大我先輩が居なかったら北斗くんと……なんて。
なんて、ね。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1542人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
akikuma(プロフ) - 読んだら思わずコメントしたくなっちゃいました！今回はもう、胸がきゅーーっとなりました…久しぶりに聞く「お前」とか荒っぽくなってく口調とか…今までの北斗先輩の気持ちが溢れてちゃったんだなってとっても切なくなっちゃいました🥺 (2022年11月25日 3時) (
レス) @page34 id: 5677edd0e4 (このIDを非表示/違反報告)
あるかない(プロフ) - いつも拝見しています！主人公ちゃんが追っかける人じゃなく、主人公ちゃんを好きな謂わば２番目と一緒になる恋愛ものってこの世に存在しないんですかね…、苦しすぎます。今作も最後まで見届けさせていただきます…。 (2022年11月24日 18時) (レス) @page30 id: 22c58e07cd (このIDを非表示/違反報告)
chaka(プロフ) - えななんさん» えななんさん、コメントありがとうございます！ずるいですよねぇぇえええ！！笑 書きながらオイ！！とは思ってます笑 イライラしつつ皆様が温かく夢主ちゃんのことを見守ってくれたら嬉しいです😌😌 (2022年11月23日 22時) (レス) @page30 id: 93153d1174 (このIDを非表示/違反報告)
えななん(プロフ) - 夢主の気持ちもわかるけど、ずるい女だなぁと思ってしまいます…北斗くんが報われない…！全部辛い…！ (2022年11月23日 22時) (レス) @page30 id: 15071f4cc5 (このIDを非表示/違反報告)
みゆき(プロフ) - 前作から拝見してました！大我くん図書室に居ますように😭🙏 (2022年11月18日 4時) (レス) @page14 id: 45ccafbfad (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：chaka
| 作成日時：2022年11月13日 12時
