第十四幕 新撰組 ページ16
.
.
.
.
.
新たな時代、明治が始まる前のこと。
倒幕を掲げた志士たちの動乱の時代、幕末。
これは、伝説の人斬り抜刀斎と、
宿敵 新撰組の若き 「幕末の白胡蝶」の追憶＿
幕末、1864年。
桂小五郎一派として、影の暗躍者を担っていた
抜刀斎は、酷く冷たい顔をした男だった。
抜刀斎と対峙した者は息の根を止められ、
その顔はあまり知れ渡っていない。
幕府の警察、新撰組にも良く似た存在が居た。
新撰組 1番隊福組長にして、唯一の女剣士。
幕末の白胡蝶として恐れられ、
新撰組の影として生きた若く美しい少女。
緋村剣心と白霧美雨が、出逢ったのは
血の雨の降る酷く冷えた晩のことだった。
✿.*･
ある晩のこと、何処からか入ってきた不確かな
情報を基に、敵を待ち伏せしていた。
しかし、抜刀斎に返り討ちにあってしまった
仲間の遺体を取り囲み、新撰組は困惑していた。
「骨まで断ち割られていますね」
「示現流でしょうか」
提灯で足元を照らしながら、新撰組1番隊組長
沖田総司は苦虫を噛み潰したような顔で呟いた。
それに続くように、淡々と分析をしたのは、
幼馴染であり若き女剣士、副組長の白霧美雨。
あまり顔色の浮かばない幼馴染を、
沖田は少し心配そうに見やっている。
「いや、違うな。恐らく族は、須藤くんの
一の太刀を流したのだろうが……」
美雨の言葉を否定したのは、1番隊組長斎藤一。
齋藤は、決意半ばに倒れた同志の遺体に視線を向けた。
赤紫色の鮮血が、遺体を中心に広がっている。
それを取り囲むように調査をしているのは、
仲間である新撰組隊士たちだ。
「弔いをしてきます」
「ああ、頼む」
他人から見れば、酷く淡白で短いやり取りだ。
けれど、美雨はとりわけ気にする様子も無く、
ひとつ頷くと、軽やかに階段を駆け上がった。
暗闇の中で、提灯の光に淡く照らされた
空色の羽織が、風を切ってふわりと揺れ動く。
ゆらゆらと靡く黒髪は、闇に溶け込んでいて、
目を僅かにでも逸らせば見失ってしまう。
「沖田くん。白霧は、夕餉は食べたのか？
顔色が優れていなかったようだが」
懐から白布巾を取り出して、遺体の血を
拭っている美雨を見上げて、齋藤は問いかけた。
沖田は静かに首を横に振ると、端正に整った顔に
僅かの戸惑いを浮かべ、小声で耳打ちした。
「月のもののようです」
「そうか、失礼した」
少し気まずそうに目を逸らす沖田と対照的に、
齋藤の反応は淡々としたものだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 62人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シロナ(プロフ) - 玉ねぎさん» 玉ねぎさん、コメントありがとうございます。ゆっくり更新の作品にも関わらず、お読み頂けて嬉しいです。 (3月3日 11時) (
レス) @page37 id: 02fecad83b (このIDを非表示/違反報告)
玉ねぎ(プロフ) - 続き楽しみに待ってます！ (2月11日 18時) (レス) @page36 id: 42fa138aff (このIDを非表示/違反報告)
シロナ(プロフ) - コロロンさん» コロロンさん、初めまして。温かいお言葉ありがとうございます！沖田君素敵ですよね。私生活が多忙で頻度は下がりましたが、お待ち頂けますと嬉しいです。心のこもったコメントありがとうございました。 (2023年2月4日 14時) (レス) id: 02fecad83b (このIDを非表示/違反報告)
コロロン - 初めまして。コロロンと申します。小説、読ませていただきました！すっごくよかったです！作者さん天才としか思えません！沖田君が結構好きなので、今後も楽しみにしています！更新頑張ってください！ (2023年1月30日 22時) (レス) @page13 id: f9a6fa5b47 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：シロナ | 作成日時：2021年10月30日 0時
