テンチョー ページ10
９.
「よくも、勝手に個室使ってくれたわね、小娘♡」
「！」
心地よいバリトンボイスのイケオジが、どこぞの女子高生のようにきゃぴきゃぴと個室の中にずいッと入ってくる。異様な光景だ。私の様子に不思議そうにしてたソーチョーも驚きで固まっている
「‥‥‥テンチョー‥」(いつのまに)
「言い訳はあるかしら？♡」
「‥‥スイマセンデシタ」
(ありませんとも‥‥)
気まずそうな顔をし、霧璃歌は片言で目の前のガタイの良いイケオジに謝る。ソーチョーは先ほどから一言も話さず、固まっている
「素直でよろしい
まぁ、いいわ。今日は個室の予約もなかったし。霧璃歌、あなたいっつもそれ分かって勝手に使うの性格悪いわ〜。しかも、私のいない間を狙って‥‥」
(ホントにお早いお帰りで‥‥ ま、自分でもそう思ってるから〜)
“テンチョー”は物憂げな様子で頬に手を置き、はぁーとため息を吐く。異様な光景ではあるが画にはなる
「ごめんね〜、テンチョー」
「絶対、そう思ってないでしょ‥。毎回、不毛な争いよね〜。ま、お金はたっぷりふんだくらせても らうわ♡」
「えぇ〜、勘弁してよ〜」
「お黙り！」
「‥‥はぁ〜い」
(でも、ふんだくるのは勘弁してほしな〜)
そう思いながらも霧璃歌はバッグの中から財布をきちんと取りだす
「はい、カード」
「‥‥‥ホント、いつ見ても憎たらしいわねこのカード」
(まったく。‥‥どこから
「へし折りたくなるわこのカード」とテンチョーはカードをじっと見て続ける。普通にやりそうなのが怖い
「勝手にカード憎むのやめて〜」
「わかってるわよ(へし折るのやめてとは言わないのね‥‥)
あぁ、お会計ね、ちょっと待ってなさい。お連れさんもうるさかったでしょ？ ごめんなさいね」
「‥‥‥あぁ」
そう言ってテンチョーは個室を出ていった
テンチョーが入ってきて以降だんまりで、さっきの会話も本当に最低限だったソーチョーが重い口を開く
(ま、ずっとか)
「‥‥‥‥プラチナカードか？」
「そーだよ、ブラックカードには負けるけどね〜」
何でもない事のように霧璃歌は答える
「‥‥‥キリューは仕事は何をしているんだ？」
「ん？」
「オレは話したのに、キリューは話してない」とソーチョーはすねたような声を出す
「話してくれないのか？」
頭をこてっと傾けてソーチョーは尋ねる
(ん〜、ずるいと思う)
〈招待〉
ラッキーアイテム
革ベルト
ラッキーカラー
あずきいろ
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作者名：潮見 不可 | 作成日時：2022年8月16日 17時
