【梵天】元伍番隊副隊長は明鏡止水 (ページ38)

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急遽ショッピング　in 六本木　３ページ38

３７．

ガチャ

「たっだいま～」
「おかえり、兄ちゃん」
「ん、やっと戻ってきた～」

戻ってきた灰谷兄
ここは家じゃないだろうと考えつつ、霧璃歌はダルそうな顔を上げて戻ってきた灰谷兄を見る。機嫌良さ気だ

そのわずか、数分後

「高千穂様、お預かりしていたカードをお返しいたします」
「ありがと」

ちょうど良いタイミングでカードも戻ってきた
買い物も終わったし、そろそろアジトに帰ろうと霧璃歌が顔を上げると
なざか、ビックリしたような顔をした灰谷兄弟が

「ん？」
「おい、キリュー。‥‥お前、今、会計をしたのか？」
「そうだけど」
「‥‥‥全部、支払ったの？キリューちゃん」
「うん」

(なんか私、変なことした？)

唖然、呆然といった様子で恐る恐る霧璃歌に尋ねる灰谷兄弟
霧璃歌は質問の意図がよくわからないと、不思議そうに返事をする

VIP室の中は変な空気だ

「あ～、服の事は気にしないで。後で送ってもらうから」
「‥‥いや、そっちじゃなくて‥‥‥」
「じゃ、何？」

そう、心底不思議そうに霧璃歌は尋ねる
そんな霧璃歌を前に、男二人は頭を抱える

「「‥‥‥」」

傍で様子を見持っていた数少ない男性店員と数多の女性店員は気の毒そうに男二人を静かに見ていた

「よし、次の買い物行こう！」
「は？」

スクッとなぜか、次の買い物に行こうと立ち上がる灰谷兄
霧璃歌は終始、わけがわからない

「なんで」
「いや、キリューちゃんのスーツまだ買ってないじゃん？」
「‥‥‥ん？‥‥うん‥」

はて、そんな予定あったかと胡乱げに霧璃歌は返答する

「そういうことで、次、行こ？」
「‥‥‥だな」
「なんで、二人で決めてんの？」

行く気満々の灰谷兄弟
霧璃歌はいぶかしげに、様子のおかしい二人を見つめる

なんか、機嫌よさそうな灰谷兄
微妙にショックを受けている灰谷弟
兄の方は前からのような気がするけど、更にテンションが上がった気がしてならない

(謎だ‥‥)

「はあ～。まぁ、いいけど、一着だけね。スーツは
　私は～、普段は～、ラフが～、いいので～」

疲れてきたのか、いつもより更に間延びした口調で霧璃歌は渋々、ＯＫを出す
もはや、投げやりだ

(家にいっぱいあるから、要らないんだけどな～。‥‥しょうがない)

「はい、決まり」
「出るか」

灰谷兄弟は悠々とVIP室を出ていく

(私が返事しなくても行く雰囲気だったよね、これ)

ふ～と息をついて霧璃歌もVIP室を出る

〈奢ってあげたい男心〉