【梵天】元伍番隊副隊長は明鏡止水 (ページ12)

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意地っ張りな宣言ページ12

１１．

分からなかった。私が今、どんな顔をしているのか

泣きそうな顔？‥‥いや違う
苦笑のような顔かも‥‥違う
じゃあ、笑顔？‥‥そうかもしれない

でも、ひとつだけわかることがある。それは、ソーチョーが私の説得(？)をあきらめたという事だ

「‥‥‥はは、本当にお前は変わらないな‥‥

　本当に‥‥‥できることなら、会いたくなかった」

(‥‥‥変わらない、か)

クシャッと前髪を掴み、疲れた様にソーチョーは泣き笑いのような枯れた声を漏らす
間髪入れずに私は答える

「ボクはずっと会いたかったよ～？」
「‥‥‥そうか。‥‥好きにしろ」

すねたようになるソーチョー。だが、反対に霧璃歌はニッコニコだ

「おおせのままに、ソーチョー様？」
「ソーチョーはやめろ。もう、オレは総長じゃない」

(そうだね、そうだった)

悲しそうな声でソーチョーは言う。でも、無表情だから本当にそう思っているかはわからない

「なら、ソーチョーこそキリューはやめて～
　もう、私は桐生高千穂じゃないんだよ～」

キリューはもう、お役御免。と霧璃歌はそこで一度区切って
そして、ソーチョーのように悲しそうに名残惜しそうに。されど、明るく霧璃歌は続ける

「“ボク”の青春と桐生高千穂という人生は東卍(あそこ)に置いてきた。‥‥‥もう、ボクの人生に桐生高千穂(ボク)と東卍は必要ないんだよ。だから“私”はもう“高千穂霧璃歌”」

未練たらたらだけどねと霧璃歌は最後に付け足す

「‥‥‥そうか、じゃあ、キリカ」
「ふふ、なーに？マンジロー」

(あぁ、本当に懐かしい。昔に戻ったみたいだ)

ありえないことを思った。みんなと楽しくバカをやったあの時代を、悲しく、寂しく、そして、綺麗に終わってしまったあの時代を。昔に戻ったみたいと、そう思ってしまった

(そんなこと、ありえないのに)

ふと、思い出した。おバカで弱くてちっぽけで、それでも誰よりも強く在(あ)ったもう一つの太陽(マンジロー)みたいな男を

(君は、予想できていたかな？未来(いま)が、マンジローが、こう成っていることを)

いいや、きっとできていないと暗い思考を断ち切るように話す

「じゃ、早速行こーか、梵天へ
　千夜ちゃんに～サプライズ～」

「本当にお前は三途が好きだな」
「そーだよ、千夜ちゃんをいじるの大好きなの」
「そっちか」

ふざけるように明るく話せば、ソーチョーは微笑を見せる

(私は幸運だ)

〈幸運〉