99 ページ49
.
「何で来たんだよ!俺は二人とも助かって欲しかった」
泣き崩れそうになる白浜さんを、萱島さんが力強く掴み支える。
まるで、張り詰めていたものがぷつりと切れたみたいに戸惑っていた。
「助けられてきたよ。本当はずっと、助けられてきたんだよ!あの崖の時も、バック無くした時も、俺が逃げそうになった時も、本当は助けられてきたんだよ、何度も何度も」
萱島さんが初めて、白浜さんに本音を全てを曝け出しぶつかっている。
そんな姿を見て、涙を堪える事はできなかった。
「溺れてた俺を引っ張り上げてくれた。命じゃない、ここを救ってくれたんだよ。お前みたいな奴がいるから、この世界も悪くない。だから一緒に行こう。生きよう!何があっても」
彼が生きていきたいと思える世界で良かった。
こんな世界でも、絶対に希望はある。
終わるかもしれない、でも続いていくのなら、そこに白浜さんもいなきゃだめなんだ。
白浜さん、この思いどうか受け止めて。
「未来はあの電車に」
「はい、乗ってます」
泣いて震えたけど、声出てたかな。
ぼやけた視界で、走っている電車を見上げた。
どんな未来になったとしても、
繋ぐんだ、私たちで。
「こっからどうなるか、まだわかんないけど、やれるだけやってみるか」
「やれるだけ、やってみよう」
肩を組んで、笑い合う二人。
私は無性に羨ましくなり、混ざるように駆け寄って、三人で歩き出した。
歩きながら見上げた空は、何事も無いように、青く澄み渡っていた。
.
93人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:藍 | 作成日時:2023年8月20日 22時