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「未来でも、ここでも、弱かった俺を助けてくれてありがとうございます。感謝感謝です」
泣いている私を笑いながら、ゆっくり優しく抱きしめられ、私も力強く抱きしめ返した。
ここが、私の居場所だ。
彼の不器用な言葉と温もりは、私の心を溶かしていった。
「A、マジで好きだから、もう悩まないで、Aは強くなった。でも俺もちゃんと守るからさ」
半分照れているのか、抱きしめられたまま、顔が見えずに、萱島さんらしくない甘い言葉を囁かれる。
全部知ったと思ったのに、なんて人なんだろう。
猛烈に顔が赤くなっているのは、自分では見えなくても自覚している。
「萱島さんはずるい」
「まぁガキではないからな」
身体を離して、笑い合ったところで、都合よく電車がやってきた。
二人で手を繋ぎながら同時に乗り込む。
私たちが救わなきゃいけないのは、お互いだけじゃない。
一人で頑張りすぎている、ヒーローを見捨てたりはできない。
仕事をしている白浜さんの姿を確認する。
そして、向こうもこっちに気づいた時に、側に近づいた。
「今日出発するはずじゃ、」
「助けに来た、お前を」
「人を助けてばかりで、助けられる事は想定外ですか?」
「責任感じてヒーローやってるお前を助けに来たんだよ」
信じられないといった表情で、動揺している様子の白浜さん。
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作者名:藍 | 作成日時:2023年8月20日 22時