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そして、その日がやってくる。
私の足は自然と萱島さんの元に向かっている。
萱島さんが何を選ぼうと、やっぱり彼の側を離れるなんて、考えられない。
理由はわからない。
でも未来も現在も、いつだって彼に惹かれ続けているんだ。
「萱島さん」
ちょうど美容室から出てきた彼の姿が見えた。
私の登場に驚いている様子だ。
「まだこんなとこにいんの、早く空港行きなよ」
「萱島さんのところにいたくて、私、やっぱり」
思いの丈をもう一度ぶつけようとしたところで、どこからともなくわらわらと人が集まってきた。
「ちょっ、こっちきな」
あまりの勢いで囲まれて、押しつぶされそうになると、萱島さんが引き寄せてくれた。
「萱島さん!萱島さん!この映像ほんとなんですか?あと数日で世界が終わる?」
「あなたも未来からやってきたAさんですよね?いつも二人でいるところ見かけてましたよ!未来で結ばれたんですか?未来って楽しそうですねぇ」
「この話が真実なら貴方達は英雄です!何か聞かせてもらえませんか」
これが世間の声ってやつか、、、
でももうどんな声も怖くは無い。
勝手な噂を立てられようと、憶測や妄想を並べられようと、私は私のままだから。
「誰と話してんの?あんたらさ、誰の話をしてんの?英雄、詐欺師、未来からの使者?誰の何の話してんの」
萱島さん、すごく怒ってる。
声を荒げて、全員に問いかける。
まるでこの世界での鬱憤を、今ぶつけているみたいに。
「その目で、耳で身体で、そいつの奥を見ろよ!知りたかったら直接聞けよ!何勝手に妄想してんだよ!」
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作者名:藍 | 作成日時:2023年8月20日 22時