55 ページ5
.
でも一人では行けないよね、
萱島さんに怒られた時の、彼の切なげな表情がよみがえってくる。
男なら良かったのに、そしてついでに強ければ、もっと何とかできるのに、、
でも気持ちは先走り、じっとはしていられず、向こうの車両の近くまで行くことにした。
そっと電車から出て、コソコソしながら歩く。
中まで行かなきゃ大丈夫、遠くから見るだけだから。
向こうの車両が見える所まで着いた。
流石にここから畑野先生を見つけるとかは無理だよね。
ただじーっとひたすら眺めている時間が続く。
特に何か問題が起きる様子も、ましてや畑野先生が見つかることもなく、ただ人の動きを見つめていた。
あ、山本さんだ
リーダーである山本さんの姿を見つける。
外に出るようで、みんなに声をかけながら森に向かって歩いている。
その後ろから1人の女性が同行していた。
え、もしやそういう関係？
そんな邪推をしながらもよく見ると、後ろの女性は手に食べ物らしき器を持っているように見えた。
これって、、
漫画とかでよくある人質に食料をってやつじゃない？
追いかけたい。
でも今いる方向と真反対に進んで行って、なおかつ距離が遠すぎて物理的に絶対見失う。
ああもう、もどかしい
畑野先生がいるかもしれないのに。
焦っている間に二人の姿は見えなくなっていた。
悔しさに包まれながら、来た道を戻る。
居場所はわからなかったけど、見た事をみんなに伝えよう。
少しでも早く、畑野先生の身の安全を確保できるように。
みんなで、やれるだけやってやる。
暗くなると気分も同じように沈んでしまう。
電車に戻り見た事をみんなに伝えた。
でもまだ白浜さん萱島さんが戻っておらず、みんなもどうしたらいいか決めかねていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 93人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：藍 | 作成日時：2023年8月20日 22時
