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「生きる意味って何なんだろ」
一刻と一刻と、終わりが近づいている今、それに抗わなきゃいけないけど、
まるで世界が灰色になったみたいに、なにも感じないんだ。
「もう来るなら来いよ」
三人で空を見上げる。
隕石、今どの辺だろ。
萱島さんとの生活も当たり前になってきて、最近は普通のカップルにみえるくらいに、空気も軽くなってきた。
世界が終わるってのに、なんだかのどかだな。
スマホに萱島さんからのメッセージが光る。
珍し、なんだろ。
萱島直哉
《関西兄ちゃんに捕まった。加藤んち。来る?》
予期せぬ内容に一瞬びっくりする。
そしてすぐに出る準備を始めた。
「A先生、会いたかった」
加藤さんの家の扉が開くと、畑野先生が出てきて抱きしめられる。
その温もりに、久しぶりに心が緩み、私も抱きしめ返した。
「連絡くれてたのにごめんなさい。本当はずっとずっと嬉しかった」
「会えたから、もう大丈夫です」
目を潤ませた畑野先生越しに、奥を覗くと萱島さんが軽く手を上げて会釈をしていた。
畑野先生に連れられ、中に入るとみんなが歓迎してくれて、嬉しくて私まで泣きそうになってしまう。
「萱島さんと、みんながいる光景、なんか懐かしくて胸が熱くなっちゃうな」
「大袈裟だろ、いつもいんのに感情豊かだな」
「そこの二人、いつの間にそんな関係?」
玲奈さんと立花さんがニヤニヤした顔で、萱島さんと私を見ていた。
ちゃんと付き合っている訳でもないのに、なんて言えばいいのかな。
「あーもう、そういういじりいらないから、再会の喜びは置いといて、話さなきゃいけないことあるでしょ」
萱島さんの制止に、辺りの雰囲気は落ち着きを取り戻す。
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作者名:藍 | 作成日時:2023年8月20日 22時