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「萱島さん」
「久しぶり、何？」
「ネット、見ました。心配で」
こう言うのきっと萱島さんは嫌がる。
わかっているけど、気持ちがとめられなかった。
「人気イケメン美容師だってさ、羨ましい？」
乾いた笑いを浮かべるも、まるで気持ちが無くなってしまったような、痛々しい姿に、何か言葉をかけようにも声が出なかった。
「しかももう美容師ですらないっていう」
「え？」
「手、使えなくて。いい加減稼ぐ方法考えないと、いい年して無職よ」
手？
最初理解できなかったけど、思い起こすうちに車両に乗り込むときに、黒いモヤに触れたシーンを思い出した。
あれが、原因で、、
「あ、あの、、」
「もういいから、わかるでしょ？同情とか勘弁だから。これが漫画みたいな冒険なら、元の世界に戻れてめでたしめでたし、はいお終い。それ以上はもういらない」
じゃと小さく呟いて足早にその場を去っていく萱島さん。
止めたい、
でも止めても彼をさらに傷つけてしまいそうで、踏み出すことはできなかった。
そしてみんなが恐れていた、乗客全員の晒し上げが始まる。
実家に身を寄せていたものの、私は外に出れなくなってしまった。
過去の事を掘り起こされて、私の悪評はあっという間にネットを駆け巡った。
まるで犯罪者を断罪しているような、罵詈雑言がネットから降り注がれる。
外を歩くと目に入る全員が敵に見えた。
一日中部屋にこもり、泣いたり怒ったりを繰り返しているうちに、心は壊れてしまった。
「私、私が悪いんだ、、全部、私のせい」
気が、おかしくなりそうだった。
ネットで検索することはしなくなり、スマホも放置するようになった。
たまに白浜さんや畑野先生、他のみんなからもメッセージ届いてそれを見る為だけに、電源を入れる。
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作者名：藍 | 作成日時：2023年8月20日 22時
