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「もう他人じゃ無い、ずっと一緒にやってきた。一人が得意とか言うな!本当に残りたかったらそうすればいい。強制なんてできない。でも弟さんを助けられなかったことの絶望から、逃げ出してるだけじゃないのか」
「勝手に決めつけんな!」
「この先俺たちはずっと思う。萱島さんはどうしてる。何で置いてきた。本当は助けたかった。ずっと後悔する」
白浜さんの言葉に自然に涙が溢れて、止められなかった。
ずっとみんなを引っ張ってきた彼の言葉は、重く説得力がある。
「いつも萱島さんはいてくれた。側で毒づいて、一人で突っ走る俺の側でからかって、それにはイラついたけど、でもそのおかげで今日まで生きてこれた!萱島さんを助けられなかったらきっと俺は一生後悔する」
胸ぐらを掴み、真っ直ぐ見据えて言葉をぶつける。
「一緒に来い、俺を信じろ」
「やれるだけ、やってみるか」
あんなに心を閉ざして、周りを跳ね除け続けていた人が、初めてやっと人を受け入れた。
ここに来て一番、リラックスしたような表情を見せた萱島さん。
場違いだけど、惹かれている私がいた。
やっと開かれた心の中に、私も入れるかな、、
そして、みんなで急いで走り出す。
本格的に嵐が来る前に戻らなきゃ、
車両に戻ると米澤くんや加藤さんが、躊躇している人達を急かしていた。
あの様子、ワームホールが現れたんだ!
私も一緒になって声をかける。
みんなに戻って欲しい。
でも不安が勝つのか、足を前に出す人はいない。
どうしよう、このままじゃ、、
「今しか無い!これが戻る最後の手段です!」
白浜さんが大声で全員に呼びかける。
全員を救う、白浜さんの信念が彼を突き動かしている。
それでも戸惑っているようで、誰も動こうとしない。
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作者名:藍 | 作成日時:2023年8月20日 22時