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嵐の前触れのような風が吹いている。

私たちは準備を進めた。
電気の通っている電線を車両に巻き付ける。
天気が悪くなってきたら電気を流して、ワームホールを広げる。それと同時に車両に乗る。

その後どうなるかは誰にもわからない。

机上の空論かもしれない。
死ぬかもしれない。
でもやらなきゃいけない。



どこかしんみりした空気が車内を包んでいる。
きっと最後の夜だとみんなが実感している。

小春ちゃんはまだ悩んでいるようで、静かに涙を流していた。

玲奈さんは、声をかける畑野先生を突っぱねている。
きっと揺れたくないんだ。

私は、、


「萱島さん、帰らないって気持ちはそのままですか?」


車両の外で座っている萱島さんに声をかけた。
やっぱり話したい。
今話さなきゃいけない。
そう思ったから、


「あぁ、無事に行けるといいな」

「終わりなんですね、私たち」

「別に何にも始まってないでしょ」


目線を外されて、誤魔化される。
人の気持ちは捕まえるくせに、いつだって萱島さんの気持ちは何重にも覆われて隠されていた。


「私だって、まだ何も決めてないです」

「仲良し先生同士、一緒に帰りなよ」


何で萱島さんが勧めるの。
自分とは別の所に行けってことなの?


「萱島さんに言われたくない。一人で勝手に決めたんだから、私も一人で決めます」

「あっそ、おやすみ」


そのまま萱島さんはツカツカと車両に戻って行った。

こんなこと言いたかったわけじゃ無いのに、、
あーもう、私こんな頑固だったかな。
あんなに思いをぶつけたのに、こんなに避けられるなんて、、、
萱島さんの気持ちはどこにあるんだろう。


モヤモヤとした思いを抱えて、その日は眠りについた。


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作者名: | 作成日時:2023年8月20日 22時

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