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「ここに残れば、俺にしかできないこともあるかもしれない。ひょっとしたら誰かを助けちゃったりできるかも」
「勇気を持って進むしかないよ」
まるで冗談言ってるみたいに笑っている萱島さんに対して、正論で正面から向き合う白浜さん。
「ねぇ、本気で帰れるって思ってる？」
「未来は変えられる」
「変えられない未来ってのもあるんじゃないの」
「そんなの、思いたくない。そんなの、俺は嫌だ」
萱島さんの勝手な決断に、まるで置いてけぼりの子供のような寂しさを感じる。
でも一方で、戻ってみんなを救いたいという思いを、否定された白浜さんのやるせ無い表情が、切なく印象に残った。
一つの事に囚われ続けている彼が、なんだか脆く見えて、言い知れぬ不安がよぎる。
信じていたものが叶わなかった時、白浜さんは立っていられるのかな。
そこからは、電線を辿っていく作業に追われた。
何もしていないと考え込んでしまうから、ただ土を掘り返す重労働が丁度良かった。
みんなで一つの事に熱中して取り組むのは、なんだか部活のようで、充実感を覚えた。
そしてついに、、
「変電所」
「やった！」
目的だった変電所の文字を目にし、みんなで子供みたいに喜んだ。
暗闇の中恐る恐る階段を下って行く。
下まで降りると配電盤のような物があった。
立花さんが率先して確かめる。
さすがシステムエンジニアだ。
次々と沢山あるスイッチを押していく。
そして最後のスイッチ。
久しぶりの明かりに、目が眩んだ。
「やった、電気が通ってる！」
「やった！！」
大袈裟なくらいに喜びを分かち合う。
なんの変哲もない人工的な電気の光だけど、でもそれは唯一の希望の光だった。
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作者名：藍 | 作成日時：2023年8月20日 22時
