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「もしかしたら、突破口になるかもしれません」
みんな頭にハテナが浮かんでいると、また例のごとく加藤さんが説明を始める。
電磁誘導を応用して、磁気を発生させるという仕組みらしい。
若干理解に苦しみつつも、電流を流せばワームホールが開くということだと納得した。
そして駅員の小森さんによると、この沿線には電気網が通っていたらしく、その施設がこの沿線沿いにあるかもしれないとのことで、
見つけた電線と電源、これで電気が生まれるとみんなのモチベーションもあがった。
「あとはもう神頼みだな、どうすれば奇跡が起きるのか」
「神頼み、、」
海老原さんの言葉に、見たこともない神様に思いを募らせる。
神様見ているなら、どうかみんなを助けて。
電線を探す為に、辺りを掘り起こす作業に追われる。
あれから萱島さんとは言葉を交わしていない。
抱きあったのに謝るなんてと腹を立てて、私も意地を張っていた。
「なぁ」
背中から呼ぶ声がして、渋々振り返る。
「私はなぁじゃないですけど」
「昨日のこと」
萱島さんはいつだって、遠回りなんてしないで核心をつく。
正直怖い、目を逸らしたいけど、それはダメだと思いとどまる。
「忘れよう。俺たちは同じ電車に乗り合わせた他人。過去も未来もそれは変わらない」
「、、そうですか。わかりました」
なんてことないみたいに、静かに淡々と告げられた。
また、逃げられてしまった。
どうやったらちゃんと向き合ってもらえるんだろう。
もうわかんないや。
顔を隠すように向き直すと、また手を動かした。
なにかしていないと、涙が止まらなくなりそうだったから。
作業の交代する時間になり、車両に戻る。
一人みんなの輪から離れている玲奈さんが目に入る。
前から元の世界には戻らないと言い切っていた玲奈さん。
畑野先生は再度、戻らないのかと声をかけていた。
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作者名:藍 | 作成日時:2023年8月20日 22時