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なんとも不思議な感覚だった。
今までどこが実感が無く、海外のジャングルにいるような気分だったけど、ここは日本で、元々いた場所のままなんだ。


何も、無いんだ。

辛いこともたくさんあったけど、勿論楽しいことだってあった。
そんな私の人生や、関わった人、生きた証は丸ごと消えてしまったようで、

誰かのせいに出来るなら、当たり散らせるのに、誰のせいでも無くて、でもここに飛ばされた事は事実で、何も無いのに私は存在している。

神様、これは悪戯?
それとも、必然ですか?


ボーッと辺りを眺めてどれくらい経ったのかな。
風の強さを感じて、立ち上がった。

いくら考えても、虚しく辛くなってしまうだけ。
もう戻ろう。悲しみに浸ってなんていられない。


迷わないように元来た道を辿って歩いていく。
誰かが大きな声を出しているのが、僅かに風に乗って耳に入った。
何かあったのかな、急ごう。

その声を頼りに、足早に進んでいく。



「小春!小春!」

「江口くん!どうしたの!」

「小春とはぐれて、俺が、俺のせいで」


狼狽した様子で、小春ちゃんの名前を何度も叫ぶ江口くんは、明らかに様子がおかしかった。


「とりあえず今は聞かない。天気が荒れそうだから探そう!」

「小春!小春!」

「小春ちゃーん!雨が降るよ帰ろう!」


見える範囲の景色には見当たらない。
急いで探さないと、嵐が来そう
一生懸命名前を叫んで、辺りを見渡す。


「おい!おい!なにやってんだよこんなとこで」

「萱島さん!」


状況は変わらないのに、彼の姿を見ただけでほっとしている私がいる。
甘えたくないと思いながらも、彼の存在は私の中で大きすぎるんだ。


「いなくなった?」

「さっきは聞かなかったけど、何かあったの?」


江口くんは神妙な面持ちで口を開いた。


「小春に、言われたんだ。妊娠してるって」


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作者名: | 作成日時:2023年8月20日 22時

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