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「あのさ、こっちの車両に移ってもいい？」
植村さんと萱島さんで車両を移る交渉が始まる。
山本さんが姿を消した後、仕切っているのはどうやら彼みたい。
あれだけ揉めた後に何故と怪しんでいる植村さんに、萱島さんはこれで決めようと奥でやっていたチンチロを提案した。
それに乗る植村さん。
だけど彼から出された条件は、萱島さんの商売道具のハサミやらを一式置いていけというものだった。
「萱島さん、大事な物をそんな賭けの対象にするなんてやめた方が」
「いいよ」
止めたかったのに遮られ、交渉成立となった。
萱島さん、どういうつもりなんだろ、、
そして二人の賭けが始まる。
ここにいる全員が注目して、バケツを囲むように眺めている。
私は萱島さんの後ろで、米澤くんらと覗き込むようにして立っていた。
後ろから嫌な気配を感じて、米澤くんの方に少し詰めるように寄る。
ここの車両の男性に、笑いながらジロジロ見られているようで、少し恐怖心を覚える。
米澤くんは微塵も気付いてない、、
「ここ座りな」
「あ、はい」
嫌がっている私の気配を感じたのか、萱島さんは私の手を引き自分の隣に座らせる。
その一連を見て、茶化すように目の前の植村さんに笑われた。
恥ずかしい、けどそれ以上に嬉しい。
照れている間にサイコロは投げられて、植村さんの出目が決まっていた。
4の6
割と強い目だ。
萱島さんの番、祈りながらサイコロを投げた。
どうかお願い、勝って！
私たちが車両に戻ると白浜さんが出てきた。
一緒にいる植村さんの姿を見て驚いている。
「これ、やるよ」
植村さんから、魚等の食料が白浜さんに手渡される。
「あと、塩も」
「あぁ、今後はいつでも、ご自由にどうぞ」
そう言い残して、彼はその場を後にした。
みんな目を丸くしている。
態度の豹変が理解できないようだ。
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作者名：藍 | 作成日時：2023年8月20日 22時
