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ご飯を食べ、少しどんよりした天気の街中を散歩して。ゆっくり流れる時間の中二人で尽きない会話を咲かせていれば徐々に沈む夕陽。
すっかり暗くなっちゃったね、なんて言えば弟者くんはそうだねと無邪気に笑った。
桜の季節はとうに終わって、紫陽花が私の視界を彩る。
「 弟者くん、今日はご飯に誘ってくれてありがとう。 」
「 こちらこそ、あんなに美味しそうに食べてくれるから誘った甲斐があったよ。 」
「 …そういう風に言われると恥ずかしい。弟者くんもたくさん食べてたじゃん。 」
「 ふふん、俺はよく食べる男だからね。 」
当たり前だけど、男の子なんだということを実感する。
初めて男の子と二人で遊んだんだ。
「 …Aちゃんはさ、なんで俺の誘いを受けてくれたの? 」
「 え、なんでって…。 」
そんなの弟者くんに会いたいからに決まってるじゃん。
私は口から出かけた言葉を飲み込んで、返す言葉に悩んだ。
どう言ったら迷惑にならないよう好意を伝えられるか。
「 …。 」
「 あ、ごめん、そんなに悩ませるつもりなかったんだけど。 」
「 ご、ごめん…。じゃあ逆に弟者くんはなんで私を誘ったの? 」
「 エッ!そ、それは、 」
質問返しをされると思ってなかったのか、驚いた顔をする弟者くん。彼も私と同じで黙り込んでしまった。
気まずい空気の中、足を止めることなくフラフラと歩き続ける私たち。
「 …俺、もっとAちゃんと仲良くなりたいって思っててさ。
バイトの時いつも駅まで送っていくじゃん?帰り道一人にするのが心配っていうのもあるけど、本当は少しでも長く話したくて。 」
「 !…そう、なの? 」
「 う、うん。LIME交換したのも、バイトでわからないこと聞きたいなんて口実で…。 」
「 ふふ、 」
弟者くんは案外繊細で、私と同じような気持ちを持っていてくれたことが嬉しくて思わず笑みが溢れる。
彼が言ってくれたから、私も言いたいな。
そう思って口を開いた。
「 私も、弟者くんと仲良くしたいってずっと思ってた。 」
「 え?本当に? 」
「 …うん、本当だよ。 」
そう言えば、弟者くんはホッとした顔で胸を撫で下ろしていた。
顔にわかりやすく感情が出ているのを見て、恥ずかしいという気持ちが飛んでいった。
今なら思っていること、話せそうだ。
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作者名:まる | 作成日時:2024年3月12日 18時