愛の権利３＿skab

第127話 ab ページ34

事務所が用意した俺とめめの家に、初めて佐久間が来た。
めめは今日雑誌の撮影で夜までお仕事。
モデルさんは大変だ。

佐久間はと言えば。
同じ事務所が用意した家なのに家具とか全然違うじゃん！と、なぜかそこにテンションアップ。


「お部屋ツアーして！」


なんて、前佐久間達の方に行った時と同じ展開。



なのに、なんでこうなるかな。
寝室で、俺の背中にあたるのはふかふかのベッドで。


「佐久間、スるの…？」
「だめ？」


さっきまで、ベッドが俺らのよりふかふか！
これがテストと本命の違いか！とかベッドに座って冗談言ってたはずなのに。
別に違わないでしょと俺が隣に座ったら、急に距離詰めて、ぽすんと押し倒して。
それから、そういう顔するのは、ズルいじゃん。


「だめでは、無いけど。
ソファじゃだめ？
結構、広いと思うし。」


ベッドに比べたらそりゃ窮屈だけど、それでもこのベッドは、ちょっと躊躇う。


「ベッドじゃだめな理由があんの？」


佐久間も何かあると悟ったのか、そしてそれを悪い方にとったのか、スッと目を細めて聞いてくる。
両方の手首が縫い付けられるように掴まれていて、背筋がゾクリとした。


「いつもここ、めめと寝てるから。」
「それで？
めめと何かしてんの？」
「そんな訳無い。」


それだけは無いときっぱり否定する。


「じゃあ何がいけないの。
ちゃんと言ってくんなきゃ、俺はここで無理にでもするから。」


すぐそこまで、佐久間の顔が近付く。


「待ってよ。
ちゃんと話すから。」
「早く言って。」


手首を抑えられる力が強くなって、思わず顔を歪める。
それでも佐久間は力を弱めようとはしなかった。


「このベッド、すごく寂しくなる。
めめがいるのに、自分の家で一人で寝るより寂しいんだよ。
なんで佐久間じゃない人と寝てるんだろうって、余計に考えちゃうから。」


佐久間の手の力が少しだけ緩まる。


「だからここでシちゃったら俺、多分夜が来る度にもっと悲しくなる。
だからここでするのは、正直怖い。」


そうしたら、佐久間まで苦しそうに顔を歪ませてた。
それからそっとキスをされた。


「ねえ阿部ちゃん。」
「ん？」
「俺も本当のこと、話していい？」
「本当のこと？」


全然検討もつかなくて、思わず聞き返す。

第128話 ab→←第126話 kj

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す