課題12 ページ13
あぁ何故、何故俺は気付いてやれなかった。
心が痛い。これは嘉柳の痛みだろうか。それとも俺の痛みだろうか。
「か、やな……」
喉から上手く声が出ない。
『ごめん……ごめんね……』
幼子のように謝り続ける嘉柳。俺は止まってなどいられなかった。
「……俺の方こそすまなかった」
『……』
一瞬体を強ばらせ、その後俺のシャツの胸元を弱々しく握りながら力を抜いた。言葉は無かった。
「お前の気苦労も知らず……すまない」
『……私が勝手に思ってしまっただけだ。お前は悪くない』
「もうお前を悲しませたくないんだ」
『!』
どう足掻いても所詮2つの個体でしかない。20数年間四六時中一緒にいる訳でも無ければ、いつでも見透かしたように相手の心中が分かる訳でも無い。
いつだって嘉柳を泣かせるのは俺だ。優越感に浸る余裕もなく、ただひたすらに悔やむ。一番大切にしたい人間なのに、何故かふとした事で傷つけてしまう。嘉柳が脆くないのは知っている。だが、それでも唯一無二の存在には変わらないのだから、俺が守らなければ。
『……すまない』
「謝るな」
『……寂しいんだ』
「ああ」
『ずっと一緒にいたというのは……時に厄介だな』
「……そうだな」
『私はもう……お前を手放せそうにない』
「手放す必要など無い。ずっと放さないでくれ」
『……じゃあ私からも頼もう』
「……?」
嘉柳は俺の首に腕を回した。突然のことによろけるが、足を踏ん張って何とか耐えた。
『もう私が寂しいと思わないようにしてくれ』
「……承知した」
頭に手を乗せてやると、腕を解いて肩口に額を置いた。
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作者名:すみた先生 | 作成日時:2021年4月29日 9時