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課題10 ページ11

小芭内にはああ言ったものの、やはり沈んだ気分はそう簡単には浮上してくれない。




『杏も置いてきてしまった……』


勝手に拗ねて……これではただの駄々っ子ではないか。なんて情けない……不甲斐ない……


思えば思う程思考はマイナス寄りに、気分は更に落ち込んでいった。






『ただいま……』

「おかえりなさ……姉上?どうかしましたか?」

『いや、何でもないよ。ありがとう千』

「……?」



駄目だ、悟らせるな。大人なのだからしっかりしないと。




部屋に行く途中で、道場から戻ってきたらしい父上と擦れ違った。



「……?嘉柳」

『はい』

「……何かあったのか」

『!いえ、何でもありません。新学期初日で疲れたようです』

「……そうか」



よもや、ちゃんと隠したつもりだったのだが……軟弱だな全く……






デスクの上にカバンを置き、床に寝そべった。


おかしい……何故今日に限ってこのように心が乱れてしまうのか。あんな事いくらでもあっただろうに……





ヴーヴー

『?……もしもし』

《おーちゃんと出たな》

『何の用かな。実弥』


電話の向こうで実弥は少し黙った。




『……用が無いなら切るよ』

《何があったか知らねェがよ》

『……』



その声は、学生時代に嫌という程聞いた……いや今でも聞く、実弥が私に世話を焼こうとする時の声だった。



《おめェ……ちったァ正直になってみろ》

『……君にそう言われる日が来るとはな』

《どういう意味だァ》

『……小芭内にも言われたよ。もっと素直になれ、とね』

《午後になってから目に見えておかしかったからなァ……悲鳴嶼さんも胡蝶も心配してた》

『よもや……みんなには迷惑をかけたな』

《お前があいつらを大事に思ってんのは別にいいがよォ……たまには迷惑とか考えずに腹割って話してみりゃいいじゃねェか》


いつもそうやって話していれば怖がられずに済むのにな。なんて、そんな軽口が言えない程電話越しの声はまるで兄のように優しく温かかった。



『……ありがとう。そうするよ』

《明日にはそのシケた面直してこいよ》

『酷いなぁ』

《じゃあな》

『うん。ありがとう実弥』




電話を切って、私は起き上がった。




『……よし』

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作者名:すみた先生 | 作成日時:2021年4月29日 9時

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