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 日頃から太陽を酷く嫌い、夏冬関係なく任務前に多量の日焼け止めを塗りまくっている肌は少しの紫外線にだって傷つけられている風には見えない。雪花石膏さながらの透けたその素肌は、今だけは薔薇の色水を存分に吸ったように紅くなっている。自らの上でそんな顔を晒しているのを指摘するまで気づいていなかったことが素直に面白かった。俺はやっばりSなんだろーな。


「殺さねーからずっとこのまま恥ずかしがってろ」
「はー……? 五条ほんとにウザい……」

 すっかり元気を無くした声音が首元に落ちた後、水気を含んで星空みたいに煌めく両目がそっと伏せられアイツの顔は降参を訴えて俺の胸元に埋まる。柔らかな衝撃で移動した空気が柔軟剤の芳香を纏って鼻腔にこんにちはした。
 若干ペースを上げている鼓動が気まずい。が、そのきまり悪い感情を上回る、例えるなら、女子が雑貨店で可愛いを連呼するようなあの気持ちが胸中を永遠に循環していた。──可愛い、欲しい。 そんな感覚。

 けれども一般的に考えてさっきからの自分の発言が異端なことこの上ないのは割と自覚しているので(直す気はないけど)、とある提案をうつ伏せたままのコイツに出してみた。





「どれだけ他の男と話してても多少なら許すし俺の居ないところでフラフラしても多分文句言わねーから、最終的には俺の隣にいて」

 明日、明後日、明々後日、いつかこの願望が真逆に変貌して馬鹿でかい後悔をするかもしれないけど、今だけはコイツを離したくない。それは一定時間だけの独占欲なんだろうけど、本当に今はずっとこのままでいたい……うっわ、女々しいな、やっぱ訂正しようかな、いや無理だわ。


「……あー、分かった。色んな男と喋ったり遊んだりさせるけど最後の最後には「やっぱり五条のほうがいいな」って気づかせる作戦だ」
「物分かりいいじゃん」
「てか多少と多分って覚悟弱すぎでは?」
「守れる自信ねーからな」
「出たよカス」
「で、返事は?」

 前髪を潜り抜けて額をひと押しする。ゆるりと持ち上がった顔は依然として紅潮しているが、口元は波線を描くようにもずもずとうごめいていた。



「……ーー、」
「んー、なんて?」









「……はやく惚れさせてよ、ばか」


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作成日時:2020年12月30日 22時

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